「昔ながらのスパイ映画は、英国流マナーと現代的センスで作る」キングスマン 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
昔ながらのスパイ映画は、英国流マナーと現代的センスで作る
スパイ映画がいつの頃からシリアス路線になって久しい昨今。
昔ながらの楽しいスパイ映画が見たい…。
そんな方々に待望の一作!
監督にマシュー・ヴォーンを配したのが大当たり。
出世作『キック・アス』で見せた、センス抜群のポップでユーモアに溢れてキレッキレのアクションが再び!
バイオレンス描写は結構過激だが、エグく感じさせないのがこの人流。
教会の大量○○シーンもノリのいい音楽に乗せてスタイリッシュ&クールに、ラストの“花火”なんてもう爆笑モノ。
マシュー・ヴォーン、今回もやってくれます!
表向きはイギリスの高級スーツ店店主、しかし本当の顔は世界最強のスパイ組織“キングスマン”のエージェント。
“THE英国紳士”コリン・ファースの為に用意されたような役。
オスカー英国王が魅せるアクションに驚き! 確か、本格アクションは初だった筈。
ビシッと着込んだスーツ姿、身のこなし、例え毒を吐いても品の良さを感じさせ、シリアスドラマにコメディにアクション…この名優からまた新たな引き出しを開けた。
そんな彼が“キングスマン”へスカウトしたのは、ある理由から長年見守ってきた青年。
不良だったこの青年が洗練された紳士スパイへ。
後半の活躍など、ちゃんと彼が主軸に据えられている点に好感。
新星タロン・エガートンが前半のちょいワルと後半の紳士スパイを演じ分けてお見事。
英国紳士スパイと対する悪役は、ファンキーなアメリカン。その対比もさることながら、サミュエル・L・ジャクソンが楽しそうに演じていて悪役なのに嫌味を感じさせない。
そのボディーガードで“足で殺す”ソフィア・ブテラも印象強し。
かつて“スパイ”だったマイケル・ケイン、意外にも見せ場があるマーク・ストロングなどキャストも豪華。
皆が捜していた今や唯一人の“ジェダイ騎士”がこんな所に…!?(笑)
さて、スパイ映画オールド・ファンが喜びそうなのが、その設定やアイテム。
個性的な悪役が目論む現実離れした大陰謀なんてあの頃の007。
ユニークなアイテムの数々は、往年のスパイ映画のお約束。あの傘なんて堪らん!
昨今のスパイ映画への苦言、ジェームズ・ボンド、ジェイソン・ボーン、そしてジャック・バウアーの共通点など小ネタも愉快。
スパイ映画以外の彷彿やオマージュも。
スカウトされて驚きの秘密基地は『メン・イン・ブラック』。
素行の悪い若者を洗練させていくのは劇中の台詞にも出てきた『マイ・フェア・レディ』。
ハリーとエグジーの師弟関係。
人を作るのは育ちや環境だけじゃない。下流階級のサクセス。
特権階級への皮肉もチクリ。
隠し味のスパイスも効いている。
昔ながらのスパイ映画に、英国流マナーと現代的なセンスを加えた、スパイ映画の快作!