劇場公開日 2015年10月24日

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「人間が生きていく上での普遍的なテーマでもありましたね」アクトレス 女たちの舞台 スペランカーさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0人間が生きていく上での普遍的なテーマでもありましたね

2017年5月2日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

楽しい

難しい

老いは人間生きていれば誰にでも訪れるもので、それを避けて通ることは不可能な訳ですが、分かってはいてもどこで線引きをしていいのか、どう折り合いを付けていけばいいのか、誰しもが一度は悩む問題だろうなと、ある種共感する部分もありつつ思わず見入ってしまった作品でした。
人は歳を重ねても、意外と傍から見るよりも自分がそんなに歳をとった感覚は持ってなかったりする生き物だと思うので、尚更どこか分かるなぁ~と言った感じで、興味深く見させてもらいました。
現実にあなたはいい歳ですよと突きつけられた瞬間って、本当にゾッとしたりしますよね・・・そうだ、子供から見たらもう自分はおじさん(又はおばさん)なんだと、いくら平静を装ってもどこか釈然としない気持ちもあったりで・・・。

特に女優と言う職業なら、我々が想像もできないほど顕著な問題だったりするのでしょう。
それを体現したジュリエット・ビノシュVSクロエ・グレース・モレッツは、直接対峙するシーンは少なかったものの、なかなかのインパクト、2人とも役と思いっ切りリンクしているようなリアルさを醸し出すから、余計に見入ってしまいましたよ。
若さに溢れ輝きを放つ怖いもの知らずな様子は、クロエだからこそ放てるもので、大女優が嫉妬するのも物凄く納得、これはナイスキャスティングだったと思いました。

一方の主役ジュリエット・ビノシュは、劇中では40歳の役でしたっけ、さすがにそれは無理があるなと正直思ってしまいましたが、いら立ったり、焦燥感に苛まされ、皮肉交じりに嫉妬する様子は、さすがの演技、やや傲慢さがいまだ垣間見れる様子を見ると、彼女もまた以前はクロエが演じたジョアンのような存在だったのだろうなと、思わず想像出来てしまうよう持って来る演技、そして演出はお見事の一言、時の流れは本当に残酷なものですねぇ。
クリステン・スチュワートが演じたマネージャーとの劇の読み合わせや、劇中劇が二重三重に現実とリンクしてくるストーリー構成も、なかなか見応えがあって面白かった、何度も読み合わせなのか言い争っているのか分からなくなりましたもんね。

こんなにクリステン・スチュワートの演技に引き込まれたのは初めてかも、マリアとの愛憎渦巻く微妙な距離感を見事に表現していたと思いましたし、オーラを消したマネージャー感も素晴らしいの一言。
三者三様の緊張感溢れる掛け合いを経て辿り着いたラストもまた印象的でした、監督のジュリエット・ビノシュへの尊敬の念も垣間見れたラストだったかな。
女優の世界を描いた作品としては勿論のこと、人間が生きていく上での普遍的なテーマを描いた作品としても、なかなか見応えのある作品でしたね。

スペランカー