劇場公開日 2015年7月4日

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「現実から眼を逸らすことが悪意を増長させる」ルック・オブ・サイレンス りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)

4.0現実から眼を逸らすことが悪意を増長させる

2015年7月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

前作『アクト・オブ・キリング』が加害者たちから一方通行だったものが、被害者と加害者の双方向へと変化している。

ただし、加害者の言い分は前作から変わらない。

すなわち、
・知らない
・あれは善行だった
・おれはただ、これこれ(上からの命令や、直接ではない行為など)をしただけだ
・いまさら、ほじくり返してどうなる
など。

そんな言い訳ばかり。

本作品の主人公ともいうべき被害者の弟アディは、彼らが行った行為が非道であったことを認めさせたいのだが、その他の被害者の心情は、どうなのか・・・

映画中盤で、虐殺の中で生き残った老人が登場する。
彼は、当時は若者で、アディの兄の友人で、虐殺から逃れた後、村から離れて暮らしていた。

その老人がいう。

過去のことは、ほじくり返さない方がいい・・・

えええっ!
たしかの老人の立場としては、生き残っていることが知れたら、余生がどうなるかはわからないが、それにしてもあんまりだ。

眼を閉じて、見ないでいれば、なかったことにできる・・・そういう、一種の諦めなのか。
現実から眼を逸らすことが、唯一の生存手段ならば、それは悲しく哀しい。

しかし、眼を逸らすことが、無自覚な悪意を増長させている。
それは明らかだろう。

非道な行為であればあるほど、その行為を見つめ、非道であることを認める。
そうでなければ、より善き世界には到達しないだろう。

そんなことを考えた一編でした。

りゃんひさ