「イグ・ペリッシュと導きの角」ホーンズ 容疑者と告白の角 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
イグ・ペリッシュと導きの角
原作はホラーの帝王の息子、
監督はホラーの鬼才、
主演は元魔法使い。
顔触れも異色なら、作品も異色。
恋人を殺された上に、その容疑まで掛けられている青年イグ。
自暴自棄のある日、朝起きると、額に傷が…じゃなくて、頭に角が生え…!
魔法使いが今度は悪魔に…??
どうやらこの角、見える人と見えない人が居るらしい。
イグの事を犯人と思ってない善良な心の持ち主には見えないようだ。イグと気心知れた友人とか。
見えるのは言うまでもなく、その反対。
さらにこの角には、不思議な力が。相手の心の中の本音や真実を告白させる力があるらしい。
告白の角~!…と、何だかドラえもんのひみつ道具みたい。
でも、そんなに優れた代物ではない。
相手が自分をどう思っているか。
あからさまに自分に敵意を見せている輩は別として、聞きたくなかった両親の辛辣な本音まで…。
世の中、本音や真実がありふれたら、素敵な世の中に…なんて成りやしない。それどころか、人とは付き合えなくなるかも。多少の嘘や建前はあっても…?
イグの辛い境遇には同情する。
警察には執拗に目を付けられ、恋人の父親には嫌われ、ダイナーのウェイトレスには嘘を付かれ、兄や友人から恋人に纏わる真実を聞かされ…。
この力を使って恋人殺しの犯人を見つけようとするイグだが、やがてそれ(=角)は復讐に駆り立てる。
自分をハメた者、嘘を付いた者、騙した者、裏切った者…。
そんな中に、遂に見つけた真犯人。
イグが犯人じゃないとすると、展開していく内に真犯人は絞り込めていくが、それは余りにも残酷なもので…。
さすがに父スティーヴン・キングほどではないにせよ、息子ジョー・ヒルの世界観も独創的。田舎町が舞台や『スタンド・バイ・ミー』な子供時代は父親譲り。
シュールで薄気味悪く、グロやエロも織り交ぜたアレクサンドル・アジャ。
ダニエル・ラドクリフは魔法が解けてから、異色の作品や役が続く。このまま個性派路線…?
周りも一癖二癖。そんな中で、悲劇のヒロイン、ジュノー・テンプルが癒しの存在。
ラストはあのまま後味悪く…と思ったら、意外な展開に。
あの“変身”やダーク・ファンタジー的ではあるが、往生際の悪い罪人には裁きを、愛を信じ続けた者には導きや救いを。
悪魔も元々は天使。
あの角は悪魔の角ではなく、天使の羽であった。