「『父親譲りの下品な作風』」ホーンズ 容疑者と告白の角 瀬雨伊府 琴さんの映画レビュー(感想・評価)
『父親譲りの下品な作風』
自宅(CS放送)にて鑑賞。カナダ・米合作。鑑賞後に知ったが、原作はS.キングの長男(姉がおり第二子)J.ヒル。主演の“イグ・ペリッシュ”役は、これ迄のキャリアによるイメージを覆す挑戦をしたD.ラドクリフと話題に事欠かない一作。田舎町を舞台に良女が殺され、その真相を巡ってオカルトチックに物語が動くのは『ツイン・ピークス/ローラ・パーマー最期の7日間('92)』を彷彿させる。蛇が登場し出す中盤辺り迄は愉しめたが、その後の展開は観る者を選ぶだろう。ファンダメンタルに即した超常的な展開に抵抗が無ければ良作であろう。60/100点。
・細かいエピソードながら、町の人々の本音や心の声は下世話なのが殆どで、原作者を知ってからは、父親譲りな作風かと納得した。
・オープニングはラストでも繰り返されるが、カメラワークがオープニングでは地下へと潜った後、奇妙なアングルが続き、ラストは天空へ上昇する。これは地に堕ちた後、天へ昇華する主人公の運命を端的に物語っていると思われる。ラストでは続く森の木々から蛇にそして堕天使の線画へと流れるエンドロールも凝っている。
・D.ラドクリフの“イグ・ペリッシュ”が乗る赤い車のナンバーは"2036LUK"となっており、これは「新約聖書 ルカによる福音書20章36節 彼らは天使に等しいものであり、また復活に預かる故に、神の子でもあるので、もう死ぬことはあり得ないからである」を指す。他にもJ.アンダーソンの“テリー・ペリッシュ”の黒い車のナンバー"GEN 138"は「同書 創世記13章8節 アブラムはロトに言った、“私達は身内の者です。私と貴方の間にも、私の牧者達と貴方の牧者達の間にも争いが無いようにしましょう。(続く9節は“全地は貴方の前にあるではありませんか。どうか私と別れて下さい。貴方が左に行けば私は右に行きます。貴方が右に行けば私は左に行きましょう”と続く)”」、更にM.ミンゲラの“リー・トゥルーノー”のベーシュ色の車は"2017EXS"であり、これは「同書 出エジプト記 第20章17節 貴方は隣人の家を貪ってはならない。隣人の妻、しもべ、はしため、牛、ろば、また全て隣人のものを貪ってはならない」を指し、各々の車のナンバープレートが意味を持っている。
・J.テンプルが演じた“メリン・ウィリアムズ”は、『エクソシスト('73)』に登場した“メリン”神父に由来するらしい。亦、D.ラドクリフの“イグ・ペリッシュ”のファーストネームは、“イグナティオス Ignatius”であり、これはラテン語で「燃えるもの」を意味し、「点火する "ignite"」の語源でもある。この役はそもそも本作に企画から参加していたS.ラブーフが予定されていたが、D.ラドクリフに交代した。
・鑑賞日:2019年1月22日(火)