劇場公開日 2015年8月22日

「100%ピュアなジェルソミーナ」夏をゆく人々 ユキト@アマミヤさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0100%ピュアなジェルソミーナ

2015年10月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

知的

幸せ

カンヌ映画祭グランプリという言葉につられて鑑賞。正直、う~ん、ビミョーですな~、これは。
普通、映画祭で賞を取る作品というのは、二種類あると思います。
①作品に圧倒的な力があること。
②いままで、誰も思いつかなかった、トンがったアート作品。
***
①に関して言えば、多くの観客が納得、感動できる作品であり、多くの人が理解できる、最大公約数でもあり、かつまた、観る人の魂の、深ぁ~い部分にまで作品のメッセージが届く。そういうあらゆる要素を兼ね備えた作品を、僕たちは平べったく「傑作」と呼ぶのですね。
②に関して言えば、まあ、ハッキリ言って「わかる奴だけ付いてこい」という監督の意思表示が極めて強い作品が多いですね。
もう、ここまでくると、ほとんど前衛芸術。われわれはスクリーンで何を見せられてるのか? さっぱり分からん?! というケースが多いです。
だけど、そういう作品の持つ圧倒的な美的センス、強烈な個性、アクの強さ。それがツボにハマった人には、もう最強な作品になりますね。その最たる例が、ルキノ・ヴィスコンティ監督の「ヴェニスに死す」などのアート系映画。
さて、本作はこれら①と②どっちに振った映画なんでしょう?
あくまで僕個人の印象としては「どっちつかず」なんですね。
まあ、ストーリーはちゃんとしてますしね。
主人公ジェルソミーナの一家はイタリア、トスカーナ地方の田舎で、養蜂業を営んでいます。お父さんは性格も天然なら、作る蜂蜜も天然。混じりっ気なしの蜂蜜にこだわっている、ちょっと頑固な人です。商売っ気があまりなく、近所に住む、商売上手な畜産業の親父さんとは好対照です。
ある日、この村に、テレビ番組のロケーション・クルーがやってきます。
番組はイタリアの地方を巡って、いろんな特産品を紹介し、一回ごとにその土地のチャンピオンを決めようというもの。もちろん賞金もあります。
ちょうど、ジェルソミーナの家には、行政の方から、蜂蜜の製造施設を衛生面に考慮してリフォームするように、という勧告が来ておりました。リフォームには、かなりのお金がかかる。そこでジェルソミーナは、父親には内緒で、こっそり、このバラエティ番組への申し込みをしてしまうのですが……。
お話としては難解ではなく、ずいぶん分かりやすい。ならば、圧倒的な感動や、あるいは、とてつもない才能を感じさせてくれる映像美、はたまた、新たなる表現の地平線を切り開く、なぁ~んて、大げさですが、そういうところが、あるか? といえば、これがイマイチなんですね。
ただ、本作のオフィシャルサイトを見てみると、監督は、まだ本作が二作目。新進気鋭の女性監督さんなんですね。
う~ん、俄然応援したくなったぞ。
ええ加減なもんですな、観客というのは。
でもね。まだ若い監督さんが、これから、いろんな映画を作れる、そういうチャンスや、自由な創作活動を絶対に応援してあげるべきだと思います。
本作では、イタリア、トスカーナ州、その海辺の風景をバックに、古代の遺跡跡で収録が行われるテレビ番組のシーンがあります。
番組のヒロイン、司会進行役がモニカ・ベルッチさん。
先日観た「サイの季節」では、リアルタッチで、シリアス。政治色も強く反映され、かなり衝撃のシーンの連続でした。
その女優さんが、本作では、低俗極まりないというか、サイケデリックというか、アホみたいなゴテゴテ、キラッキラの被り物付き衣装で登場するというのは、なんとも面白い趣向です。そんな役をOKしたのは、経験豊富なモニカ・ベルッチという女優が、この若い監督さんを盛り立てよう、としているからでしょう。それは父親役の俳優さんもそうでしょうし。
そして、本作のとっておきのヒロイン。ジェルソミーナ役のマリア・アレクサンドラ・ルング。撮影当時、若干11歳。
本作でいきなり女優デビュー、しかも主役、という大抜擢。
この少女の持つ、カリスマ性。顔立ちをみてください。この人、古代ローマ帝国の彫刻が、そのまま21世紀の現代によみがえったかのような雰囲気を持っております。実に神秘的な雰囲気を持った少女です。
カンヌでグランプリをとった作品の主演女優ですよ!!
これから先、彼女はどうするんだろう? えらいことになってきましたね。
僕としては、「クジラの島の少女」で主役を演じたケイシャ・キャッスル・ヒューズさんみたいになったらいいなぁ~。日本で言えば、子役から大人になっても活躍している、多部未華子さん、はたまた宮崎あおいさんのような……。
子役さんで成功しても、そのあと成長するにつれ、徐々に人気が落ちてくる俳優さんが多いのですが、そうならないように、本人、周りとも、ぜひ見守ってあげてほしいものです。

ユキト@アマミヤ