恋人たちのレビュー・感想・評価
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人生の5年ごとに観返したい一本。
監督舞台挨拶ありでの鑑賞。
まさに「普通の人々の物語」の一本。
観ていて痛い、苦しい、息が詰まる。
それは主人公三組が決して突飛な人間ではないから。
誰もが抱える「日常の当たり前」と化したルーチンワークの中の行き詰まり。
そこ破ろうと少し足を踏み出す、そんな人たちの話。
三者三様、いろいろな痛み。
でもこれは特別なものでなく、日々生きていれば誰もの中にあるものだと自分は思う。
「自分は特別ではなく、また他人も特別である。」
禅問答のようだが、そんなことを感じた。
劇中に「救い」は用意されているのだが。
それを噛み砕いて観られるほど、個人的に抱える問題はまだ溶けるのに時間がかかるんだなと感じた作品。
「たった一人でいいんだよ」という監督の言葉と。
劇中、携帯のメモリを見ながら主人公がつぶやく
「昔友達だったあなたたちは、いまもともだちですか?」
その一言が忘れられない。
息がつまる
無差別殺人で妻を亡くし、毎日を生きるのが苦しい被害者遺族男性。夢とはほど遠い、退屈な毎日をおくる田舎の主婦。周囲から愛想をつかれるゲイのエリート弁護士。毎日を苦しみながら生きる3人のストーリー。
不器用な3人の負の日常のループ。加えて、何か不幸が重なり一度、階段から足を踏み外すと軌道修正を許さない社会。
自分自身が感じる今の日本の生きづらさや空気がそのまま切り取られていて、見ていてすごく息が詰まった。
悪い人じゃないけど気の合わない同僚、職場の程度の低いバカわらいと疎外感、変なトーンの喋り方……リアリティあるシーンが物語に現実味を与える。
俳優はこれが演技なのか、と疑うほど自然な語り口、ふるまい。聞き取れないセリフもあるほど。ドキュメンタリーを見ているような気持ちになる場面も。
橋口監督が描く繊細な空気感はヒリヒリ痛く、辛く。こんなに空気感というものが映像化できるのか、と舌を巻く。
繰り返し出てくるセリフ『くだらない世の中だけど生きていくしかない』これが映画のすべて。くだらない世の中だけど前へ進もう、いつもの優しいラストで救われる。
不器用な男女の群像劇
商品としてどうか
普通の人たちの群像劇。批評などを読むと、現代日本社会とそこに生きる「私達」をリアルに描いている、ということになっている。
私には全くリアルに思えない。
まず、主演俳優達の演技がつたない。そのつたなさが役柄の不器用さとかぶって見えるという印象はあるけれど、芸としての上手さが感じられない。リズムも良くないし、セリフの抑揚もなく、くどく聞こえる。
自分の伝えたい事を伝えるために創作したものは、あくまで作り物であって、現実としての力はもたない。素人同然の役者を使っても、ドキュメンタリーっぽい物にすぎない。役者そのものを描きたいならドキュメンタリーにすればいい。
テーマも「そもそも生きてくってそういうことじゃない?」という問題で、日本社会の問題を掘り下げているようには思えない。
全体に監督が感じていることを詰め込んだという印象で、お金をとるなら商品としてもっと整えてほしいと感じた。
なんか不幸な気分
それでも頑張ろう!
人対人の付き合いを濃くしようと動き始めた矢先に見た映画。
「そうそう、人付き合いってこうだよね〜」と、スクリーンに映る泥臭くてどうしようもない生きづらさを、ある種、懐かしみながら見ていられたのが序盤だけ。それぞれの生きづらさが徐々に色濃くなるに連れ、自分のダメさと重なることが多くなった。ラストシーンが今後の自分を写してしまうようで、このままどこまで堕ちて行くのだろうと心配になった。
でもそれでもなんとか生きていく。
ダメでもいいさ、いいこともある。
ラストシーンの空と笑顔、
そしてエンドロール後の風景が
清々しい余韻を残した。
あまり考えすぎず、自分らしく人と接する勇気をもらった。
いいタイミングでもらった希望。
個人は描けたが、世間は描けてないのでは・・・
『ぐるりのこと。』以来7年ぶりの橋口亮輔監督作品『恋人たち』は、今年、一・二を争う注目作品。
前作『ぐるりのこと。』では、夫婦の物語を通して、日本という国全体を文字どおり「ぐるり」と見廻した。
謳い文句の「それでも人は、生きていく」というのも心に引っかかる。
さて、そんな期待を胸に、映画のこと。
主人公は三人。
橋梁の安全点検作業者のアツシは、数年前、通り魔に妻を殺害された過去を持っている。
夫と反りの合わない姑と三人暮らしの主婦の瞳子は、弁当をづくりのパートをしながら、退屈な日々を送っている。
同性愛者の弁護士の四ノ宮は、相手を見下していることを悟られ、同棲相手から別れを切り出されてしまう。
そんな彼らが、居場所を求め、居場所を探し、自分の気持ちと折り合いをつけて生きていく、そんなハナシ。
主人公の三人を演じるのは、これまで演技経験のない、いわば素人。
橋口監督とのワークショップで、役作りをしたという。
彼らが表現する感情は痛いほど伝わってくる。
自分の気持ちは、どうしたら他人が判ってくれるのだろうか。
自分は、不当に扱われている(しまっている)のじゃなかろうか。
自分に居場所なんかないんじゃないか。
なんだか、あまりにも理不尽な世の中だ・・・
そんな感情が吐露され、爆発する。
たしかに、そういう気持ちはわかる、そういう気持ちになることもある。
しかし・・・
そういった「自分が」「自分は」ばかりを見せられると、観客としてツラくなる。
『ぐるりのこと。』もツラいハナシだったが、夫婦ふたりに感情移入したり、自己投影したりして、そういうことで「ぐるり」と世間が見えたけれど、この映画ではそれが見えない。
なんなんのだろうか、この違い。
考えてみると、主人公三人を取り巻くひとびとのエピソードが薄っぺらいからではありますまいか。
特に、かなりの尺を割いて描かれる瞳子に絡む光石研と安藤玉恵のエピソードが作り物めいている。
そして、ふたりが演技すればするほど、ハナシが嘘にみえてくる、世間が嘘にみえてくる。
そういうように見えてしまうと、「自分が」「自分は」といっている主人公三人の感情の吐露も爆発も、うまく受け取る(受け容れる)ことができなくなってしまった。
個人は描けているが、世間は描けていない。
『ぐるりのこと。』とは、そこが大きな違いでしょう。
とはいえ、やはり今年一・二を争う注目作品ということは変わらない。
一気に橋口監督のファンに!
その闇を
黒田大輔がいい!
最愛の妻を通り魔に殺された若者、田舎で姑と同居している主婦、ゲイのエリート弁護士と、彼らを取り囲む人達の群像劇。
通り魔への怒りが社会への怒りに変化して自分で生きづらくしてしまってる若者にしても、自他ともに認める才能を活かさずにいるし、暇つぶしに書いている小説を好きな男の前に置いておきながら「見ちゃやだー」と媚びを売るタバコ吸い過ぎ主婦とか、エリート意識が鼻につく弁護士、その他の周辺の人間もロクデナシばっか。共感する部分があるとは言え全面的には好きになれない人達の中で、唯一、若者の上司だけは泣けるほど良い人。
橋口亮輔監督の作品は初めて観たけどクスクス笑えるシーンも割とあり、他のも観てみたいと思った。
でも主婦の夫の変化などは説明がないというか無理があり、またその主婦が繰り返し見ている雅子さま御成婚当時のビデオの中で彼女の友達がスマホを手にしている?けっこう雑なのね、なんて。
じわじわと良くなって来た
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