恋人たちのレビュー・感想・評価
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不器用な男女の群像劇
悩みや迷いを抱えて出口が見えないと思っている中で、身近な人に案外すんなり救われることもある。映画の軸になる3人もそう。目先のことから一生懸命やっていれば、それを見ている人は必ずいるのです。
映画に華美な感動はない。描かれているのは極めて控えめな希望ですが、それがあるから人は心を支えられて生きていけるのだと思います。
商品としてどうか
普通の人たちの群像劇。批評などを読むと、現代日本社会とそこに生きる「私達」をリアルに描いている、ということになっている。
私には全くリアルに思えない。
まず、主演俳優達の演技がつたない。そのつたなさが役柄の不器用さとかぶって見えるという印象はあるけれど、芸としての上手さが感じられない。リズムも良くないし、セリフの抑揚もなく、くどく聞こえる。
自分の伝えたい事を伝えるために創作したものは、あくまで作り物であって、現実としての力はもたない。素人同然の役者を使っても、ドキュメンタリーっぽい物にすぎない。役者そのものを描きたいならドキュメンタリーにすればいい。
テーマも「そもそも生きてくってそういうことじゃない?」という問題で、日本社会の問題を掘り下げているようには思えない。
全体に監督が感じていることを詰め込んだという印象で、お金をとるなら商品としてもっと整えてほしいと感じた。
なんか不幸な気分
それでも頑張ろう!
人対人の付き合いを濃くしようと動き始めた矢先に見た映画。
「そうそう、人付き合いってこうだよね〜」と、スクリーンに映る泥臭くてどうしようもない生きづらさを、ある種、懐かしみながら見ていられたのが序盤だけ。それぞれの生きづらさが徐々に色濃くなるに連れ、自分のダメさと重なることが多くなった。ラストシーンが今後の自分を写してしまうようで、このままどこまで堕ちて行くのだろうと心配になった。
でもそれでもなんとか生きていく。
ダメでもいいさ、いいこともある。
ラストシーンの空と笑顔、
そしてエンドロール後の風景が
清々しい余韻を残した。
あまり考えすぎず、自分らしく人と接する勇気をもらった。
いいタイミングでもらった希望。
個人は描けたが、世間は描けてないのでは・・・
『ぐるりのこと。』以来7年ぶりの橋口亮輔監督作品『恋人たち』は、今年、一・二を争う注目作品。
前作『ぐるりのこと。』では、夫婦の物語を通して、日本という国全体を文字どおり「ぐるり」と見廻した。
謳い文句の「それでも人は、生きていく」というのも心に引っかかる。
さて、そんな期待を胸に、映画のこと。
主人公は三人。
橋梁の安全点検作業者のアツシは、数年前、通り魔に妻を殺害された過去を持っている。
夫と反りの合わない姑と三人暮らしの主婦の瞳子は、弁当をづくりのパートをしながら、退屈な日々を送っている。
同性愛者の弁護士の四ノ宮は、相手を見下していることを悟られ、同棲相手から別れを切り出されてしまう。
そんな彼らが、居場所を求め、居場所を探し、自分の気持ちと折り合いをつけて生きていく、そんなハナシ。
主人公の三人を演じるのは、これまで演技経験のない、いわば素人。
橋口監督とのワークショップで、役作りをしたという。
彼らが表現する感情は痛いほど伝わってくる。
自分の気持ちは、どうしたら他人が判ってくれるのだろうか。
自分は、不当に扱われている(しまっている)のじゃなかろうか。
自分に居場所なんかないんじゃないか。
なんだか、あまりにも理不尽な世の中だ・・・
そんな感情が吐露され、爆発する。
たしかに、そういう気持ちはわかる、そういう気持ちになることもある。
しかし・・・
そういった「自分が」「自分は」ばかりを見せられると、観客としてツラくなる。
『ぐるりのこと。』もツラいハナシだったが、夫婦ふたりに感情移入したり、自己投影したりして、そういうことで「ぐるり」と世間が見えたけれど、この映画ではそれが見えない。
なんなんのだろうか、この違い。
考えてみると、主人公三人を取り巻くひとびとのエピソードが薄っぺらいからではありますまいか。
特に、かなりの尺を割いて描かれる瞳子に絡む光石研と安藤玉恵のエピソードが作り物めいている。
そして、ふたりが演技すればするほど、ハナシが嘘にみえてくる、世間が嘘にみえてくる。
そういうように見えてしまうと、「自分が」「自分は」といっている主人公三人の感情の吐露も爆発も、うまく受け取る(受け容れる)ことができなくなってしまった。
個人は描けているが、世間は描けていない。
『ぐるりのこと。』とは、そこが大きな違いでしょう。
とはいえ、やはり今年一・二を争う注目作品ということは変わらない。
一気に橋口監督のファンに!
その闇を
黒田大輔がいい!
最愛の妻を通り魔に殺された若者、田舎で姑と同居している主婦、ゲイのエリート弁護士と、彼らを取り囲む人達の群像劇。
通り魔への怒りが社会への怒りに変化して自分で生きづらくしてしまってる若者にしても、自他ともに認める才能を活かさずにいるし、暇つぶしに書いている小説を好きな男の前に置いておきながら「見ちゃやだー」と媚びを売るタバコ吸い過ぎ主婦とか、エリート意識が鼻につく弁護士、その他の周辺の人間もロクデナシばっか。共感する部分があるとは言え全面的には好きになれない人達の中で、唯一、若者の上司だけは泣けるほど良い人。
橋口亮輔監督の作品は初めて観たけどクスクス笑えるシーンも割とあり、他のも観てみたいと思った。
でも主婦の夫の変化などは説明がないというか無理があり、またその主婦が繰り返し見ている雅子さま御成婚当時のビデオの中で彼女の友達がスマホを手にしている?けっこう雑なのね、なんて。
じわじわと良くなって来た
あっと言う間の220分。
タイトルをどうにかできなかったものか
シンプルでつまらなそうな題名をつけることによって、この映画の覚悟を感じるが、さすがにもったいないと思ってしまう。危うく自分自身、タイトルだけでスルーしそうになった。内容が素晴らしかっただけに、余計このタイトルについて疑問を感じてしまっただけなのだが─。
まさに社会の縮図がそこにあり、ひどいドキュメンタリーなんかよりもリアルな日本を感じ取ることができる。
日常を丹念に描きつつ、涙も笑いも怒りも幸せもエロスも醜悪さも、社会が持っている面白いところを全て網羅しているような気がした。
とにかく皆一生懸命につくってるなぁ、そう感じるて、自然と涙・・・。
主演の彼が思いっきり笑ったときが一番泣いたなー。
音楽もしっくりハマっていたし、何より自分が好きな部類のものだったから一層話に入り込んでいった。
東京の水上交通の映像も良かった。見れそうで見れないところ、そして何気に美しかったりするもので、ブルーに染まって見応えあり。
全てにわたって抑えが効いていて、短絡的になることなく、淡々と終結するところが非常に自分には合っていた気がする。
長くて平坦な映画だが、東京物語なみに最後まで飽きることなく観賞できた。
人生ってのは筑前煮みたいなもので、この映画も、筑前煮みたいな映画でした。
人生ってのは筑前煮みたいなもので、この映画も、筑前煮みたいな映画でした。
人生の挫折とか、社会の残酷さとか、そういうものを体験してる人なら、ジワっとくると思います。
つまり万人受けする映画なんだけど、こういった煮物みたいな映画に慣れていない人にはハードルが高いと思います。
僕はこれ鬱の時に見てたらきっと号泣してましたね…。いまが辛い人に見て欲しい映画です。
冷たい熱帯魚みたいに、人生ってのはなぁ辛いんだよぉ!と言わない所が、好きです。勿論冷たい熱帯魚も大好きですが。
見てる間は退屈なんだけど、見終わると、一つ一つのシーンが、とても印象深いです。そしてあの登場人物たちにも、実際に会ってきた、そんな感じがします。
あの胡散臭いスナック アムールのおばさんや鶏のおっさん。
タバコを肺に入れないで吸う薄っぺらいおばさん。
人生に絶望している主人公の男。
元左翼で左腕吹っ飛ばしちゃった優しい目のおっさん。
橋下徹みたいに偉そうな弁護士。
調子のいい職場の後輩。
立ちションのバカカップル。
メインから脇役までみんなすごくいいです。みんな一見嫌な奴なんだけど、みんな各々辛く苦しい人生を生きています。
主人公の男は、見えない欠陥を探す仕事です。
彼はトンカチで橋の支柱を叩きながら、自分の人生が壊れているかを確認します。
支柱に大きな×を書いて、全部壊れてるよ、と言い投げます。自分の人生は壊れているんだと。
誰にも感謝されるわけでもなく、客の笑顔も見えない仕事は、辛いです。
だからこそ、先輩に、才能あるんだからさ。なんて言われると、とても救いになります。
食べて、笑えれば、それで良いんだよ。
という台詞にも、とても救われます。
先輩の言葉は、痛みを知ってる人が言える言葉だと感じました。
それは彼の態度や表情にも十分現れています。
Akeboshiの主題歌も良いです。
Usual life。映画の登場人物たちが普段の生活に戻るように、映画を見終わった観客たちに、エンドロールで「Get back to usual life」と語りかける感じです。
オリジナル版は、安倍さんのアンダーコントロールスピーチをサンプリングしています。是非聞いてみてください。
劇場を出た後、世界が少し変わって見えました。今年の邦画で一番感動しました。
良いダメ 悪いダメ タチの悪いダメ
映画の内容自体は、この手の作品の題材で使われるような出来事であり、救われないという意味では往年のATG映画のようでもある。但し、そういう映画自体が少なくなっている現在に於いては希有な作品として評価されてもいいと思う。
社会の厳しく、苦しく、絶望的ですらある事実に、否応なしに巻き込まれそして堕ちていく生活の破綻に、それでも自ら生を終わりに出来ず、藻掻き、足掻き、益々沈んでしまう負のスパイラルを人間はどうやって乗り越えるのか、否、乗り越える必要があるのか、そうやって生きるという『地獄』をやり過ごすきっかけを掴むのが、作品としての締めである。
強い感動はない、感嘆もない、静かに静かに沁みる映画である。
浅ましく、だらしない、そしていて強く逞しく過ごす人間に称賛を送っている監督の気持ちが強く刻まれているのを、ジワジワと心に入り込む。
切ない、非常に切ない、そしていて、それでも生きようよって、元全共闘の片腕を爆弾で吹き飛ばしてしまった上司の存在、その役がこの作品を言い表しているような・・・
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