「息苦しい世の中」恋人たち Miya Vivaさんの映画レビュー(感想・評価)
息苦しい世の中
友達の勧めで鑑賞。
とても良い映画でした。
橋口監督の作品はぐるりのこと以来、2本目でしたが、やっぱり好きだなー。他の作品、絶対見たほうがいいな、、、と思いました。
高校生くらいの時から10数年、生きることが苦しいと感じる時期が必ずあって、離婚を機にそれがパタッとおさまった。それ以来、一度もあの時ほど息苦しいと感じる事はない。
この映画を見ていると、世の中の不条理や、人間社会に蔓延るどっちでもいいマウンティング。見栄や利己的な考え、嘘くさい表現や薄っぺらい言葉達がたくさん映されていて、見ているうちにとても悲しくなる。
ただ、登場人物達がそれぞれの苦悩や不満を抱えながらその世の中で前に進もうとする姿を最後に見せてくれたおかげで救われた。
篠原さんの演技は初めてらしく不器用でテクニックなんてものよりも、心の中から湧き出てくる情熱のようなものを感じて、自分がそこに寄り添えた気持ちになって、ただただ、彼が涙するシーンでは胸がいっぱいになった。世の中には彼のようにどこへも持っていくことのできない悲しみを抱えて今も生活している人がたくさんいるように思えて、本当に悲しくなる。
主婦役の女性は、最初こそ全く感情移入できなかったけれど、最後に彼女の本当の嬉しそうな表情をみて、嬉しくなった。
四ノ宮さんは、出てくるたびにイライラしたけど、彼が自分の気持ちを話す時、とても寂しくなった。
彼のせいではないのにな、、、と。世の中のマイノリティーに対する、否定的な姿勢は普段からとても気に入らないので、それがあからさまに見られて、とても悲しかった。でも現実にあるんだなぁー。
最後のエンドロール、川のシーンを見ながらこの映画を見た人それぞれがどんな思いに浸るのかと思いを馳せた。川の流れのようにただただその流れに身を任せて、その中で起こることに浮いたり沈んだりを繰り返しながら人生を送る、そんな気持ちになった。
篠原さんの上司がいった、世の中には3種類のバカがいるといった言葉と、「人を殺しちゃいけないよ。殺したら君と話ができなくなる。僕はもっとあなたと話がしたい」って言葉。とても好きでした。