「俳優って」恋人たち Hiroki Abeさんの映画レビュー(感想・評価)
俳優って
誰しも何かを抱え、何かを解決できないまま日々を過ごしている。解決するのではなく折り合いをつけて生きていく。劇中ではそんな不器用ながらも日々を生きていく市井の人々がもがき、憧れ、諦めながらも前に進む様を丹念に描写している。
まずは雰囲気が非常に良い。割とありきたりな設定であるがリアルな日常を感じさせる空気と設定ではなく人物、感情を捉え続けるカメラが映画ならではの非常に良い雰囲気を作り出している。
そして、俳優陣が良い。他を例に出すべきではないのかもしれないが最近の俳優は公開前になるとテレビにでてタレントみたいなことをし過ぎる。本人達もイヤなのかもしれないがはっきり言って作品の邪魔でしかない。映画という虚構をリアルに演じる上で俳優個人のキャラクターなんていらない。むしろ、分かれば分かるほど出演する映画の世界が壊されていく。そんなのは俳優ぶりたい病のアイドルとかタレントに任せておけばいい。話がそれたが、今作はそんな俳優になりたいんじゃなくてチヤホヤされたいだけのイケメン、かわい子ちゃんよりもずっとずっとちゃんとした俳優がスクリーンにいました。荒削りながらも真摯に演じるその姿勢だけでもスクリーンで見る価値があると思います。
そして、他者との関わり合いという作品のテーマ上、どうしても避けて通れなかった「一人語り」昨今の映像ではタブーに近い演出ですが、今作ではそこに真っ向勝負し見事に成立させています。物語終盤の独白、もしくは弱音、諦め、憧れ、どの感情とも似ているが非なるもの。人間の機微を丹念に真摯に捉えた良作をぜひともスクリーンでみて欲しい。
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