劇場公開日 2015年4月18日

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「セリフが全部手話という要素がここまでのオリジナリティを生み出すとは!」ザ・トライブ あふろざむらいさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0セリフが全部手話という要素がここまでのオリジナリティを生み出すとは!

2025年1月12日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

興奮

知的

ストーリー:
ろうあ者の寄宿学校にセルゲイが転校してくる。
学校内には不良グループがあり、セルゲイはその洗礼を受ける。
腕っぷしの強さを道められ、仲間に引き込まれる。
不良グループは売春や列車内強盗などで金を稼いでいた。

映像:
キューブリック風の画面構成。
カメラは1台で、キャラクターごとに切り替えたりはしない。
全身が映るショットが多く、キャラクターが室内などにいる場合はカメラは動かない。一つのシーンがはじまると時間軸のままで展開するのでドキュメンタリー風の印象を受ける。

感想:
10年前の映画だが当時の印象と変わらず素晴らしい。
冒頭「この映画の言語は手話である。字幕や吹替は存在しない」というアナウンスが出る。
原題の「Плем'я」は「部族」という意味。
セルゲイが転入するろうあ学校の不良グループをさしている。
同時に手話を使うコミュニティ全体も示していると思われる。
寄宿学校という閉鎖的な空間が特殊なコミュニティを生み出す。

視点を拡大すると「ハリー・ポッター」もホグワーツ魔法学校というエリート主義的な魔法使いの学校に、人間に育てられたハリーが入学し、イギリスの貴族カースト制度を経験する過程が描かれている。
本作は魔法使いではなくろうあ者という人々がモチーフとなっているが構造は似ている。ハリー・ポッターとの類似性を指摘したいわけではなく、閉鎖的なコミュニティは独自のルールが生み出されがちだということだ。
現実にウクライナのろうあ学校というコミュニティがこのような犯罪の温床になっているかどうかは不明だ。

2014年に公開された映画との比較:
「トランスフォーマー/ロストエイジ」「ホビット 決戦のゆくえ」「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」「アメイジング・スパイダーマン」といったあたりがヒットしており、いわゆるヒーロー映画の大量生産がはじまりかけている時期。
アート系シネマは「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」「6才のボクが、大人になるまで。」「グランド・ブダペスト・ホテル」「博士と彼女のセオリー」が公開されている。人気監督の作品が多い。
その中で本作はかなり奮闘した印象だ。

あふろざむらい