劇場公開日 2015年10月17日

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「時間の経過をさりげなく見事に描いた傑作」アデライン、100年目の恋 うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5時間の経過をさりげなく見事に描いた傑作

2021年7月8日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

もし、若いときに理由も告げられずに振られた女性がいて、その女性が50年後に目の前に現れたら?若いときのまま、年をとらずに。

そんな演技を身体で理解して、自然に演じることができる俳優が居るとしたら、ハリソン・フォードをおいて他には居ないだろう

そのくらい、見事な再会の場面の演技だった。
ブレイク・ライブリーは若いのに、ハリソンの演技に引っ張られて、思いがけない再会に伴う、とても複雑な感情をあらわにした。

驚いたのは、ハリソン・フォードの若いときを演じたアンソニー・イングルーバーという俳優が、実はハリソンの物まねが得意で、まるで彼が若返ったようにしか見えないこと。スターウォーズのスピンオフを撮るなら、ヤング・ハン・ソロは彼でやって欲しい。というくらい似ている。

ブレイクの演技はともすれば平板で、抑揚の無いものに映るが、見かけとは別に、精神が年をとっていくとしたらきっとこうなるだろう。親しいものを失う悲しみを、最大限の感情の振幅で表現している。それでもどこかに、覚悟と経験と芯の強さを秘めた抑制の効いた名演だ。「ロスト・バケーション」で、一気にキャリアがブレイクしたように思ったが、「ゴシップガール」で積み上げてきた経験が生きているのだろう。ドラマは見たことが無かったけど、彼女の演技を目当てにちょっと見てみたいとも思った。

順調にキャリアを重ねていけば、数年内にオスカー女優になってしまうんじゃないかというくらい、彼女には期待している。
残念ながら、100年生きた女性には見えないほど、若すぎて、深みとか、滋味のようなものが感じられないのが唯一欠けているものだろうか。

「ベンジャミン・バトン」はブラッド・ピットがキャリアの円熟期に演じて、「枯れない花」を表現した。ブレイクは比較的浅いキャリアで、「枯れない花」をやったが、今後も繰り返し彼女のキャリアに重なってくるテーマだろうと予感する。それほど見事な演技で、最近ではいちばんのお気に入りの女優さんになった。

かなしくて、素敵な、現代のおとぎ話だった。

2016.8.26

うそつきカモメ