「俳優、監督、脚本の才能が相まって生まれた秀作」わたしに会うまでの1600キロ ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
俳優、監督、脚本の才能が相まって生まれた秀作
C.ストレイドによる自伝的物語を、売れっ子作家ニック・ホーンビィが脚色した人間ドラマ。ホーンビィといえば、キャリアの原点において自身のスポーツ・エッセイを自らの手で映画用に脚色したことでも知られているが、本作もこれに似たかなり大胆な脚色を行っている。その結果、核となるエッセンスを極上のユーモアとエモーションが巧みに支えた、思わず胸の熱くなるような重厚なストーリーラインが誕生した。そこに主演のリース・ウィザースプーンによって体当たりで演じられる等身大の人間像が加わり、「自分を変えたい」「人生を変えたい」「自分の中の母の記憶と向き合いたい」という感情が少しずつ天高くに向けて昇華されていく。ジャン=マルク・バレ監督ならではのヒリヒリする内面描写も素晴らしく、特にフラッシュバックを多用したイメージの連鎖は観る者の心をえぐってやまない。かくも俳優、監督、脚本の才能が絶妙に相まって生まれた秀作である。
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