「日本国が経験した3.11災害を踏まえた傑作映画」シン・ゴジラ Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
日本国が経験した3.11災害を踏まえた傑作映画
究極のゴジラ映画であるとともに、日本国が経験した3.11災害を踏まえた傑作映画であると唸らされた。
総監督及び脚本が庵野秀明の2016年公開の東宝製作配給の日本映画、監督及び特技監督が樋口真嗣。音楽がエヴァンゲリオン同様に鷺巣詩郎、及びゴジラシリーズの音楽で知られる伊福部昭(再使用)。ゴジラキャラクターデザイン・造形は竹谷隆之。
出演が長谷川博己、竹野内豊、石原さとみ、市川実日子、大杉蓮、柄本明、塚本晋也、高橋一生、余貴美子ら。
まず何より、ゴジラが蒲田君、品川君を経て三段階で変態を遂げるというアイデアと、その具体的造形が素晴らしかった。
そして、想定外の事態に右往左往する政府およぶ御用学者、立川に脱出しようとするが簡単にゴジラにやられてしまう政権幹部を描くストーリー展開が、リアリティを感じさせて実に秀逸。
政府危機の中、共同でゴジラに立ち向かう市川実日子ら変わり者若手官僚たちの姿が、日本の現場力の底力を感じさせて胸を打つ。
市川の好演も有るが、庵野自身がアニメ製作現場の集団創造の能力の高さを信じきれているせいか、加えて観客が自組織の中の優秀な人間が何処に存在するかを把握できているせいか、一定の説得力を感じた。よく出来た上手い脚本と思った。
放射性廃棄物捕食する不明海底生物研究の学者(庵野が尊敬する岡本喜八監督)の海上からの謎の失踪(ゴジラとの合体を暗喩)を冒頭に置き、彼による暗号化資料を解き明かすことでゴジラを倒す薬剤を見出す流れも、とても良く練られている印象。
最後、尻尾に幼体を数体孕んだままゴジラが東京駅脇で凍結して立ち尽くす姿(福島原発の象徴か)が余韻を残し、何とも秀逸。
共感ありがとうございます。
この作品は“ゴジラネタ”では異質で一番面白かったのが、ゴジラという非現実の中飄々と現実的な会話を交わす人々の描写だったと思います。だから矢口の最後の鼓舞とかあまり響かないです、仕事ですからと言う國村さんのがよっぽど。