「同人誌版ゴジラ」シン・ゴジラ おさがめさんの映画レビュー(感想・評価)
同人誌版ゴジラ
オタクとアートの間を行き来する監督によるゴジラ作品という事で、初期エヴァが好きな私は、友人達の勧めもあって楽しみにして鑑賞した分、ずいぶん落胆させられた。
まず兵器や戦闘機等、果ては電車にまで出てくる謎の名称テロップで私の気持ちは大分削がれた。オタク特有の、誰も求めてないのに一々得意げに解説してくる気持ち悪く罪深い一面がとても感じられて嫌な気持ちになった。あそこまで逐一出されるからには何らかの意味があって然るべきだと思うが、私には全く意味が見出せず、ただ監督という特権を使ったオタク丸出しの自慰行為を見せつけられている気がして不快の極みだった。
そして前半に特に割かれる緊急事における日本の対応を風刺したような人間ドラマは、踊る大捜査線における警察の構造の風刺レベルで、とりわけ名作レベルでは無く、寧ろ陳腐に感じた。
緊急事態だと煽るわりには歴代総理含めて誰も彼も皆、切迫感や恐怖感、絶望感を一切感じているようには思えず、全編通して出演者から人間性を感じ取る事は出来なかった。総理共々死んでいったシーンもガメラ3の襲来の時のような恐怖感は一切無かった。
これまで初期エヴァでネガティブなエネルギーに満ちた様々なシーンやキャラクターを作り上げた監督の渾身の各形態のゴジラのデザインも微妙で、狙った感が全面に出すぎていて、あの蒲田くんもただの滑稽にしか感じられなかった。というか歴代ゴジラシリーズに対するリスペクトを一切感じさせられなかった。エゴ丸出しで愛の無い正にオタク特有の自慰行為だった。
CGも評判のようだが、ハリウッド版ゴジラと比べても何も迫力が無く、本当にこれに大金がかかったのか疑わしさすら感じられた。というかここも10年くらい前の政府自治体制作の災害啓蒙ビデオみたいな映像でこれが本当に最新なのかと首を捻らされた。
全編を通して感じたのは、監督のエゴとそれに付随する他者性の欠如でありオタクに監督をやった場合の悪い部分が如実に出ていた。
また人間描写には情念と言ったものが感じられず、映像もキレイなだけで迫力の一切無いもので見ている私が感情移入する余地は全く無く、金のかかった同人誌が出来ましたという感じでした。
もし子供達がこれを見てカッコいい、すごいというならそれはそれでしょうがないと思うのだが、大人がこれを見て名作だと思うならその人とは付き合いを考え直すレベルでした。