劇場公開日 2016年7月29日

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「唯一無二のシンギュラリティ」シン・ゴジラ 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5唯一無二のシンギュラリティ

2020年7月11日
PCから投稿

ゴジラの歴史を知りません。
またエヴァンゲリオンのことはぜんぜん知りません。

初動に、現実に怪獣が現れたらどうなるかという制作意図があるはずだと思った。
現実に怪獣があらわれた場合の官邸の行動が、呆れ返るほど子細に表現されている。
それゆえ、会議室の各所管の発言だけで、映画的興奮につながっている──という、ほとんど有り得ない技術的特異点を持っている映画だと思う。

台詞が聞いたこともないほど早口で、かつ専門的であるにもかかわらず、その聞き逃し、あるいは理解不能が、まったく支障になっていなかったのは、演出に説得力があるからだと思う。

その演出の特徴は、発言者の寄った表情と、矢継ぎ早のカットが総て。
ゴジラの勇姿や街の崩壊は、むしろ参考場面のような副次品であり、演技も心象もほとんどなく、映画的ダイナミズムを編集で生み出している──と感じた。
厖大な出演者、厖大な台詞量、厖大なカット──それらを、適切な順番で並べることで、ドラマが立ち上がってくる様はみごとという他なかった。

個人的には石原さとみに違和感があった。ネイティブを主張するには英語に無理があったのみならず、大統領特使であるなら見た目の理知に欠けていた。常に不自然な「気張り」を感じてしまう女優でもある。
この映画の台詞は多少大げさに言ってしまうと半分は解らない。ただし、日本人の俳優が、ネイティブに寄せようとして、背伸びしてしゃべる英語は、はっきり解る。youtuberにジャッジされなくとも明瞭に解る。それはどんな映画でも、そういうものだ。ほぼ紅一点だったせいで目立った。
ところでプライベートジェットで彼女に助言する手だけの要人はキッシンジャーではなかろうか。

ひとつ、解らないのはゴジラの動機である。
見落としかもしれないが、ゴジラが上陸して破壊した理由が、ハッキリしていなかったと思う。

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津次郎