「.」シン・ゴジラ 瀬雨伊府 琴さんの映画レビュー(感想・評価)
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劇場にて鑑賞。国産12年振りとなるシリーズ第29作。余りに評判が良いので鑑賞を躊躇していたが、思い切ってこの眼で確認しに行った。聴きしに勝る人気の様でパンフレットは売り切れ入荷未定との事。指摘されている何等かの政治的メッセージやプロパガンダよりもエンターテイメント性が際立っており、国粋主義やナショナリズムを擽られるよりも映画として存分に愉しめ、鑑賞前の穿った考えを一掃してくれた。ただ100箇国以上での公開が決まっていると云われる海外にこの儘、持っていたとすれば評価は厳しいと思われる。85/100点。
・約13億と云われる製作費に対し、国内で50億以上稼げば、続篇の可能性があり得るとアナウンスされており、公開三週間後の8月14日時点で、約230万人の動員、興行収入34億円に迫っており、50億円超えは確実視されている。この為、続篇製作の可能性は極めて高い。尚、アニメ版が、'17年に公開予定されている。
・度々登場する会議シーンが迫真のリアリティがあり、兎に角佳かった。専門用語の多用と畳み掛ける様な早口の演出は監督の意図したもので、撮影現場ではゆっくりした科白回しのシーンはカットすると演者達に伝えられていたと云う。
・キャストは総勢328名となっており、豪華な顔ぶれがそこかしこに散見出来、某アイドルグループ出身者等は、冒頭数秒のみの登場となっている。“東竜太”の柄本明、“花森麗子”の余貴美子、“財前正夫”の國村隼、“安田龍彥”の高橋一生等、印象深い。中でもラストで初めて微笑む“尾頭ヒロミ”の市川実日子が佳かったが、“里見祐介”の平泉成が一番美味しい役どころだった。公開日の7月29日、328番目に発表された“呉爾羅(モーションキャスチャ)”の野村萬斎がどこ迄、演じたのかが気になった。
・オマージュに満ちた音楽の使われ方──特にエンドクレジットでのメドレーは往年のファンなら涙ものだろう。緩やかなカットの切り替えが多く、引いたアングルからの長回しによる対話シーン等、難癖を附けるならアニメっぽかった。特撮やCGは頑張っていたと思うが、一部、首を傾げる箇所も存在する。特にクライマックス、無人の新幹線爆弾が並走して突撃するシーンはアレッ?となってしまった。破壊された街の遠景等も、随分被害が少ない様に見受けられた。
・本家東宝が作ったので、ゴジラの造形や設定の改変は許されるのだろうが、これをもしどこかの国がやったなら恐らくバッシングを受けたと思われる。個人的には、紫色交じりの顎が割れた怖い顔のもいいが、ウルウルした真ん丸な瞳の鱧か鰻の様な茶色いお茶目そうなのの方がお気に入り。
・鑑賞日:2016年8月18日(木)