「災害と人々のリアクションを描いた、エンターテイメント」シン・ゴジラ JIさんの映画レビュー(感想・評価)
災害と人々のリアクションを描いた、エンターテイメント
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突如ゴジラが襲来。想定外の事態を前にした、組織や人々を描いた映画。
3.11の震災の記憶が残る、2016年の公開。
しかし、この映画は災害の怖さや政府の欠点や外交関係の危うさを指摘する、問題提起の映画ではない、と私は思う。むしろ、災害を観て楽しんだり、慌てる人を見て面白がったり、ゴジラとの闘いを観戦して内心熱狂するための映画である。
そう考えると、最後のゴジラの尻尾の謎も分かり易い。夢のない見解ではあるが、あの尻尾についているヒト型の何かは、特に意味のない、バズ要素である。
意味ありげで謎な要素を足しておくと、話題になるし、おもしろがれる。2001年宇宙の旅みたいなもの。
ヒト型というのは、意味を感じさせやすく、かつゾッとしやすい適切な選択だと思う。そして狙い通り、見た人は皆それぞれの考察を深めており、筋の通る複数の解釈が出て来ている。とても良いバランスの謎だ。後から、こういう意図だったと説明することもできるので、無いかもしれないが、続編も作れる。
そういう謎要素を入れようという気持ちは共感できる気がしている。私は大好きである。
ところで、この映画が3.11などの災害を意識して作られているからといって、破壊シーンを楽しむことを不謹慎だというのは見当違いだ。
人はスクリーンを通して見るものなら、悲しい光景であれ恐ろしい光景であれ、エンターテイメントとして楽しむことができる。その感性を無視するのは素直ではない。
実際の津波の動画を見て「こわくて最高!」と言ったらさすがにひどいが、現実でタブーな楽しみを堂々と享受できることが、映画の一つの価値ではないか。
(後日加筆)
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