劇場公開日 2016年7月29日

  • 予告編を見る

「庵野は怪獣を撮ってくれ!」シン・ゴジラ gooさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0庵野は怪獣を撮ってくれ!

2017年9月24日
iPhoneアプリから投稿

映画館で三回、自宅で五回。
計八回見ている。
公開された当初正直期待していなかった。
庵野秀明はエヴァンゲリオンを正直長く伸ばし過ぎているし、回を重ねるごとに詰まらなくなっているからだ。
それでも公開されれば見に行ってしまうのは90年代に10代を過ごし、エヴァンゲリオンが青春の時間の多くを占めていたからなのだろうが、正直庵野秀明はもう疲れている、と思ったのだ。
もう新しい事は出てこない。
エヴァンゲリオンや、トップを狙えのような傑作を生み出す力はもう無いだろうと、少し憐れむような気持ちで最初は見た。

だが悪い期待は裏切られた。
よくこのゴジラを作ってくれた。
ゴジラを、子供達のヒーローから、遠く異世界の住人に引き戻してくれたのだ。
このゴジラは理解出来ない。
人間の意思とは全く関係なく、ただ歩き、破壊し、蹂躙する。
人の生活する街を焼き尽くし、薙ぎ倒し、駆逐する。

こういうゴジラが見たかったのだ。
もともとゴジラは水爆の権化で生まれてきた。
人の生活する場所が根こそぎ奪われ、略奪される。
そういう様を、戦後の焼け野原がまだ残る中上映したのが初代ゴジラだ。
それと同じものが、現代に蘇った。
蒲田から始まり、品川、銀座、丸の内、そういった人々が住み慣れた東京の街が人の理解出来ない火によって焼き尽くされていく。
その様の美しさ!

人が内包する、住み慣れた場所に見慣れない景色を映し出す破壊衝動を、このゴジラは見事に描き切った。
そしてそれだけではない。
震災後復旧する街は、人の手によってまた復活していく。
その傷を負ったままで。
それが出来る。
そうしていくんだという、強い意志もこの映画に庵野が込めたメッセージとしてある。
この国が震災後復活していく様を、この映画は希望に満ちた目で見ている。

感動しました。
また撮ってくれ!

goo