「最高のポリティカル・フィクション」シン・ゴジラ ふまさんさんの映画レビュー(感想・評価)
最高のポリティカル・フィクション
劇場で5回、関連作品として初代『ゴジラ』、84年版の『ゴジラ』、岡本喜八監督の『日本のいちばん長い日』もストリーミングで視聴しました。
本作は、水爆実験の副産物としての厄災だった初代作品を正しく踏襲したもので、各国により海洋に不法投棄された放射性廃棄物が厄災の発端になっています。
本作のゴジラは形態が進化していくのですが、巷で「蒲田くん」と呼ばれている形態は東日本大震災の津波の、そして最終形態「鎌倉さん」は福島第一原発事故の、それぞれメタファーとなっています。
同じく3.11に触発された作品に、今話題の『君の名は。』がありますが、あちらが時間遡行して歴史改変し、災害そのものを無かったことにしているのに対し、本作は、東京のど真ん中に《冷温停止》されたゴジラが鎮座し、それを受け入れて生きて行かなくてはならないというラストであり、それはすなわち大震災・原子力災害後を生きる覚悟をしなくてはならない我々日本人のあるべき姿であり、それを示したところに『君の名は。』と大きく違う最大の価値があります。
クライマックスでは、米国中心の有志連合が、東京もろとも核兵器でゴジラを殲滅するという作戦を立てます。主人公たちはそれを回避するために、日本が得意とする民間の工業力を借りて、核攻撃実行前にゴジラを凍結させる決死の選択をします。人類史上最悪の核被害である「ヒロシマ・ナガサキ」のカットを挿入し、三度目はなんとしても阻止したい、として。ここには、強い反核のメッセージも込められています。
前半部分は『日本のいちばん長い日』に影響を受けた「会議映画」として、中盤はリアルな取材と高い映像技術による「自衛隊映画」として楽しめますが、本作の核心部分は3.11後の日本人のあり方と、核兵器についてのポリティカルなメッセージ性にあります。
このメッセージをどう受け止めるかが評価の分かれ目になるかもしれません。