「子供の頃に観たデストロイヤー前後の作品群とは毛色が違いますが、好き好きでしょう」シン・ゴジラ 福島健太さんの映画レビュー(感想・評価)
子供の頃に観たデストロイヤー前後の作品群とは毛色が違いますが、好き好きでしょう
僕は30代前半ですので、小学校高学年から中学高校にかけてはゴジラに限らずガメラシリーズでレギオン襲来や邪神(イリス)覚醒、モスラの海底の大決戦など怪獣映画が盛んでしたし、よく見ました。
ですから、僕は怪獣映画といえば怪獣対怪獣の戦いを真っ先にイメージします。
今回はコンピュータグラフィックデザイナーをしている友人から国産ゴジラと聞き、幸いに友人も声をかけてもらうことができてゴジラの製作に携わることができると喜んでいたものですから、僕はそれ以上詳しいことを聞かずに、ただ映画館へ行きました。
で、前述の怪獣対怪獣のイメージで行ったものですから、全然イメージの違うゴジラに違和感を覚えました。
監督がアニメエヴァンゲリオンで有名な人だと聞いていましたが、確かに昔観ていた1990年代後半から2000年頃までの映画とは印象ががらりと変わります。
着ぐるみ時代には少なかった空撮と思われる高度のある俯瞰する映像を多用したり、短いカットを多用して未曾有の大災害の混乱を演出するように次々と映像が切り替わったり、あわせて素早く動く映像で画面がブレたり、演出方法や画面の構図がどちらかといえばエヴァンゲリオンでどこか見たような感じのものも多かったように思います。
ゴジラが作中で初めて放射能を吐いたときの、音楽の表現やあれほどの破壊でありながら阿鼻叫喚というよりは悲鳴を上げるいとまさえない一瞬の絶対的な破壊、そしてひと仕切りの破壊をもたらしてのち、ひっそりと祈るようにやや首を下げて佇むゴジラの姿にはどこか神々しささえ感じる厳かな雰囲気がありました。
エヴァのように文字のカットインを多用したり、次々と切り替わる自衛隊拠点などの名称を字幕でただ表示したりする切り替わりの早い展開は好みで分かれると思いますが、僕は個人的にはごちゃごちゃしてあまり好きではありません。
がれきや車両などが必要以上に派手に吹っ飛ぶ過剰表現も、僕の好みではありません。
ゴジラ対○○のような、対立する強大な力が存在する作品と違ってゴジラという存在があたかも唯一無二の、絶対的な神の化身であるような表現も、子供の頃に見ていたもののイメージがあるので違和感を感じます。
ゴジラ対メカゴジラかなにかで、未来から時を超えてきた人たちが過去へさかのぼってゴジラがゴジラになる前に殺してしまおうとする話があったはずですが、ゴジラは無人島に生き残った恐竜が核実験の巻き添えで突然変異を起こしてゴジラになったものと思っていました。
誕生の経緯は、似ていないといえなくもありませんが、ゴジラの誕生からして触れて今作のゴジラをゴジラになる以前の深海生物の段階から定義付けるなら、別にこれがゴジラでなくてもいいと思います。
映画としてはアニメ監督が手がけた怪獣映画として、アニメぽい過剰表現などをふんだんに取り入れた迫力のある内容になっていると思います。
ただし、これをゴジラといってしまうのは、90年代怪獣ブーム世代としては違和感を覚えます。
むしろ、これをゴジラとはいわないで欲しいです。
もっと昔の、モノクロ映像などの古いゴジラファンの反応はわかりませんが、僕は個人的には、ゴジラは決して絶対神にはなれない存在だと思っています。
ガメラのように古代文明の残した伝説でもなく、モスラのように妖精によって祀られる神の使いでもない、核という人間の生み出した罪を背負ったものであるように思っています。
だから、まるで神の裁きのような放射能による絶対的な破壊はボクのイメージするゴジラとは遠くかけ離れた、何か別の怪獣のようでした。
これをゴジラといわないで欲しいくらいです。
映画としては悪くないし、映像も音楽も迫力ある演出で見ごたえがあり、興奮についていえばポイント高いです。
ただ、これはゴジラじゃない方がいいと思います。