あんのレビュー・感想・評価
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手間はまめへのおもてなし
らい病への差別の問題がテーマかと思いきや、やり残したことはありませんか?って、そういうこと?時給は600円でも300円でも200円でも、どうでもいいんです。店長の目が悲しかったから、寄り添っていたかった。空気感で泣かせる作品。
風と光
恐怖からくる偏見。生きるということを考えました。 樹木希林さん、永...
友人の勧めで鑑賞。席は年配の方が多かった。どら焼き屋に樹木希林、冒...
樹木希林
店長さん
前向きになれる映画
おいしい時は、笑うのよ
静かに、静かに、余計なことは語らずに。
河瀬監督らしい映画。
鳥の鳴き声、擦れる葉音、車のクラクション、人々の喧騒、、、すべての生活音があふれている。台本にある台詞というよりは、会話のようなしゃべり。顔の脂汗がレンズにつくぞってくらいにアップの多用。風景に変な色も付けず、曇天でもいとわない。そして、ここぞというとき以外は一切音楽を使わないから、ぐっと心を持っていかれる。
樹木希林扮する徳江は、これ見よがしに苦節を語らず控えめな態度で笑顔を絶やさない。それでいて、人の邪魔をしないような心配りができている。
そして、「自由っていいものよ。あなたたちも好きなことをしなさいよ。(たしかこんなセリフ)」という言葉をいう彼女。囲いの中で50年も生きてきた彼女だと思うからこそ、そのささやかな笑顔に隠された本当の強い本音がこちらに伝わってきてとめどなく涙があふれてくるのだ。自分の人生が変わってしまったのと同じ年頃の少女たちを見つめながら笑ってそういう彼女を見ながら、涙があふれてくるのだ、たまらなく。
「カナリア」に擬された彼女の人生。この笑顔を得るまで、この人がどれだけの人生を生きてきたのか想像するだけで胸が詰まって仕方がない。だからこそ、徳江のしぐさひとつひとつを見つめているだけで、悲しい場面でもなくても、涙腺が緩みっぱなし。
千太郎もワカナも、その生き様に心が震えるは当然だろう。
終わり方もいい。特段何を成功したでもなく、少なくとも、「生きていこう」と強く心に決めた千太郎が愛おしい。
脳裏に残る千太郎の「どら焼き、いかがですか!」。ああまた泣けてきた。
鳥かごのカナリア。
河瀬監督の話題の映画を鑑賞しました。登場人物の関係等細かい説明等あまりない。でも、互いの会話や表情などで過去から今の背景など鑑賞しているこちらが想像出来るように演習されてます。樹木希林さんの実のお孫さんのもっている鳥かごのカナリア。これに物語が集約されてるような気がしました。もちろん、餡子をつくる映像と音。桜。晩秋を想わせる街の風情など!映像も美しく、その辺りも見処でもありましょう。
鳥かごのカナリア。いろんなルールや世間体や国の決めた法律等いろんなものに縛られて私たちは、今生きています。でも、どこかで折り合いつけて生きていかねばならない。そんな苦悩の中からでもヒントを見つける。そんなことを河瀬監督は言いたかったんでは?私はそう思います。 最後の永瀬さんのシーンは、まさに何か生きていくヒントを見つけたんだと思います。 いろいろあるけど、明日から頑張ろう。
囲いの中にいるのは
今年度最高。樹木希林の代表作
河瀨直美監督の新作である。ハンセン病を扱った作品なのだが、そのことはつい最近になって知った。奈良(高の原)のイオンシネマではずいぶん前から予告編をやっていて、樹木希林さんがあんを作るシーンだけが淡々と写され、和菓子屋さんのドラマかなと思っていた。そのシーンが説得力のある画面で、出来上がるのを楽しみにしていた。川瀬監督の作品であることも最初の予告編では気づかなかった。なるほど早くからやるわけだ。(川瀬監督は奈良県の出身)
映画の前半は予告編通りのあん作りの物語だ。いい加減などら焼きを焼いている永瀬正敏のもとに樹木希林がふらりと訪れ、アルバイトをしたいという。あまりの高齢に、いったんは断る永瀬だったが、彼女のあんを一口食べて彼女を雇うことにする。そこからは予想通りの展開で、ふたりでおいしいあんを作り、店も繁盛しだすという物語だ。
そのあん作りの場面がていねいにていねいに撮られている。心を込めてあんを丁寧に作るのと同じように、映画もていねいに映し出している。
やがて、彼女がハンセン病を患ったことがあり、手に後遺症が残っていることが明らかになってくる。そして大家の浅田美代子が差別を恐れ口を出してくるのだが、ここからも予想通りの展開だ。いつしか客足が途絶え、樹木希林は永瀬の店を去る。
この後の映画を見ると、河瀨監督が並の映画作家ではないということがよくわかる。切々と差別や悲しみを訴えるようなことはしない。ただ淡々とその後の日常が描かれる。施設に帰って穏やかに暮らしている樹木希林。楽しかったアルバイトの日々を思い出す樹木希林の隣には友人の市原悦子がいて、「私も働きたかったな」とぼそっとつぶやく。詳しい説明も何もないが、その台詞だけで涙がこぼれる。
登場人物たちの背景が詳しく語られることはない。永瀬は前科があるらしいこと、浅田美代子に借金があること。それくらいだ。謎の中学生(樹木希林の孫の内田伽羅が演じている)は母親にネグレクトされているらしいことくらいしか情報がない。彼女と永瀬の関係も不明だ。樹木希林に関しても子どものころに発病して施設に入れられたこと。結婚や妊娠、強制中絶の経験があるらしいこと、がぽつりぽつりと語られる。
雄弁に多くを語り、背景を描きつくす作品もある中で、この河瀨作品では、本当に淡々と日常が描かれ、必要かつ十分な情報をその中に織り込み、無駄な部分をすべてそぎ落とした編集になっている。それでいて、一つ一つのシーンが、なんでもない短い台詞が3人の人物の細部をきちんと描くことにつながっている。その河瀨演出を支えているのが、この3人の演技力であることは間違いない。樹木希林は予告編の中で、「最後の映画のつもりで一生懸命演じました」と語っていたし、「KANO」でさらに演技力や存在感を増した永瀬正敏も抑えた演技で応える。新人の内田伽羅も新人とは思えない演技力だ。(河瀨監督の映画ではいつも素人や新人が活躍している)
2015年を代表する日本映画になることは間違いないし、樹木希林の代表作になることも間違いのない作品だろう。
こんな店地元にあったら
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