「日常の中にひっそり輝く人間の尊さ」あん ちんたらさんの映画レビュー(感想・評価)
日常の中にひっそり輝く人間の尊さ
台詞が少なく、張り詰めた糸を紡ぐようなカットと、余韻を残すシーン。何気ない街の中の自然美を織り込んで、美しい日常を描く。
樹木希林の、この瞬間を慈しむように生きる老婆の演技が圧倒的。寡黙な永瀬正敏も、演技に深みを出し、二人の重い人生が火花を散らすように、展開する。
何度か、ふっと、こみ上げるものがある。感動を盛り上げたシーンではなくだ。これが映画の魅力かも知れない。
あえて、切ったシーン、舌足らずに、説明しすぎないことをあえて演出したという。観客のイマジネーションに委ねるべく。
その清楚な演出が映画のたたずまいに品格を与えている。
平凡な日常の奥にある人間の尊さを気付かせてくれる佳作だった。
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