「世間の厳しさと守れなかったことへの内省」あん キッスィさんの映画レビュー(感想・評価)
世間の厳しさと守れなかったことへの内省
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数年前から気になっていた作品。河瀬作品をいくつか拝見したが、これが一番伝わってきたし、一番感動した。
ケンカの仲裁で相手に障害を追わせてしまい、借金の肩代わりをした感じ悪い金持ちによって雇われ店長をしている千太郎、元ハンセン病患者で半世紀以上療養所で生活し、世間の冷たい眼をイヤというほど体感してきた徳江、闇を抱える中学生のワカナ、をめぐる話。
ある日バイト候補でやってきた徳江は確かな味で人気のどら焼きになるが、元ハンセン病ということが世間に知られ、バイトも追われ、店自体も経営も悪化していく。
徳江の先入観を持たずに「あん」の美味しさに感動してバイトとして雇うその純粋さを主軸に話が進むが、千太郎に感情移入してはいけないのではないか、と思いながら鑑賞していた。というのも、悲しい・悔しいなど次々にいろいろな感情が千太郎に押し寄せてくるが、千太郎自身も負い目を持つ。その自己内省をしてこそのどら焼き作りではないか。
そう思うと、フラットな状態で見ようと心がけた作品だった。こんなに感情をコントロールしながら見た作品は今までになかったのではないだろうか。
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