「「てんちょさん、美味しいときには笑うのよ」」あん kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
「てんちょさん、美味しいときには笑うのよ」
桜に囲まれたアパート。桜に囲まれたどら焼き屋“どら春”。なぜだか女子中学生が学校の帰り道に立ち寄りやすそうな店。ふらっとやってきた76歳の徳江はアルバイト募集の張り紙を見て、雇ってもらえないかと千太郎に懇願する。二度目に来たときには自家製の粒あんを持ってきて、その味にほれ込んだ千太郎は徳江を雇うことに。
大将の奥さん(浅田美代子)が辞めさせるように忠告するも、穏やかな口調だったためにそのまま徳江を雇っていた。常連で高校進学も諦めかけていたワカナ(内田伽羅)が先輩陽平(太賀)とハンセン病の資料を調べていた。時を同じくして、どら焼き屋の客も遠のいていった。静かに店を去っていった徳江。手紙を受け取った千太郎はワカナとともに徳江の住む療養所を訪れるのだった。
桜の季節から柊の季節を経てまた桜の季節で終わる作品。まるで主人公徳江の生きざまをそのまま季節の流れに乗せたかのような演出。2018年9月に亡くなった樹木希林の人生をも象徴するかのような映画になったのかもしれません。また市原悦子が2019年1月に後を追うかのように亡くなり、この映画の重みが増した。彼女たちが伝えたいことを全て受け止めることはできないにしても、政府がハンセン病患者に対して行った隔離という愚行は十分理解できた。
最近になっても知的障碍者に対する旧優生保護法が行った断種手術など、国内における差別政策が明らかになるのですが、まだまだ隠されたことがありそうです。季節の流れを樹木で表現していましたが、差別用語である「らい病」という言葉も前半は使われていたのに後半はすべて「ハンセン病」と言っていたことも印象に残ります。ワカナたちが興味を持って勉強し、自ら成長したことをも表わしていたかのようでした。
千太郎(永瀬正敏)自身も仲裁から加害者になったという傷害事件を悔いるエピソードも効果的でした。徳江の「陽の当たる社会に出たい」と思う気持ちが彼の中にもあったのです。しかし、徳江が彼の前に現れなければ一生暗い人生を送っていたに違いない。千太郎とワカナの人生に大きく関わったほど、徳江が残した功績、生きてきた証しを残したことに三度涙してしまいました。
私のレビューの方にコメントありがとうございます!私も返事を書かせていただきましたが、「レビューを読むだけの時」と書いたつもりが、「書く読む」と入力されていました(笑)
kossyさん いいねをありがとうございます。本当に 樹木希林さんの集大成のような 最後?に相応しい素晴らしい映画でしたね!忘れられない映画になりました。