劇場公開日 2015年5月30日

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「理不尽な境遇にも一条の光がまぶしい」あん ロンロンさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0理不尽な境遇にも一条の光がまぶしい

2018年11月8日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

他者から自己に向けられる理不尽さや不条理な制限があるならば、それを苦々しく思いながらも受け入れなければ一条の光が射すことはないのかもしれない。と考えさせられる深いテーマに共感の涙が止まらなかった。他人にはなかなか打ち明けられない苦悩を「あん」を縁に、境遇の違う者同士でも理解しようと努めてくれる人の存在を感じられるだけで自信のない心から一歩でも踏み出す勇気になるのだと教えられる。自分を救いようがない境遇だと思い込み何もしない事より純粋に求める対象に向き合うことが大切だと樹木希林さん演じる徳江さんの笑顔に気づかされる。何かを与えようとした相手から逆に多くの何かを頂いていると気付き感謝する時にこそ再生の光が射すのかもしれない。日本では古くから「あ」は始まりであり「ん」は終わりを表わすと云われてきたけれど、この作品では毎日の「あん」作りで心の再生が繰り返される。生死を超えた永遠の命を「あん」を通して感じる時、自らの命も救われ喜びに笑顔が自然に溢れる。その美しさ、尊さを本作は見事にとらえている。
永瀬正敏さん演じる店長さんが勇気を持って最後に叫ぶ「どら焼き、いかがですか〜」の声に涙が止まらなかった。樹木希林さんの多くを語らない、その佇まい、表情に心底、胸を打たれた。「あん」は優しく勇気を持つことを教えてくれる本当に心が温かくなる映画でした。

ロンロン