「慈愛」あん みみずさんの映画レビュー(感想・評価)
慈愛
ハンセン病については、私個人では科学的根拠に基づいて行動できる。
しかし、それに家族が絡んでくるとそれは揺らぐ。
私の中の倫理観など、さほどに脆い。
浅田美代子は衆愚の象徴で、それに抗える者は少なかろう。
その圧力に屈しざるを得ない非条理を過去の非条理と共に、
永瀬正敏が全身で表していた。
それにもう当たり前すぎて口に出すのも憚られるほどに、
樹木希林の圧倒的な存在感に打ちのめされた。
もはや悟りの境地、
神々しいほどの慈愛とその奥深くにある耐え難い悲哀、
今思い出しても涙が滲む。
かなりのロングランだったので、
何度も映画館に足を運ぶ機会はあった。
だが、テーマの重さが私に二の足を踏ませた。
確かに重くはあったが、それに勝る温かさに溢れていた。
映画館で見逃したのは、痛恨の極み。
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