劇場公開日 2015年5月30日

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「●裏テーマに考えさせられる。」あん うり坊033さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0●裏テーマに考えさせられる。

2016年5月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

主役の3人が素晴らしい。
永瀬正敏が時折みせる感情。内田伽羅の芯の太さ。樹木希林は言うまでもないが。

心を込めて丁寧に作ったあんこは、ホントに美味い。
片田舎のスーパー「さいち」のおはぎを思い出した。

じんわり泣ける。映像がキレイ。
小鳥の声、食卓の音などの日常音が、映像に厚みを持たせている。
一方、音を消した「間」がまたなんとも言えない。

風の音の恐ろしさ。

しかし、こういう裏テーマだったとは。
恥ずかしながらハンセン病のことは、ほとんど知らなかったので調べた。

まず、感染する病気ではない。遺伝もしない。
しかし国や医学界は、1940年代にその事実を知りながら、患者を隔離し続けた。
ようやく「らい予防法」が廃止されたのは1996年。国が控訴を見送ったのは2002年だ。

その間、患者たちは差別され続けた。
子供を産ませてもらえない。家族と一緒の墓にも入れない。

一説には、施設内で望まぬ妊娠が多発したからとか、
禁欲を徹底させるよりは、との断種手術だったとか。
隔離することで差別から救ったとも言えなくもないが、
隔離して子孫を残さぬ政策を貫いた医学界のドンがいたとか。

患者たちにとっては酷い話だ。

こうした作品が、ハンセン病に対する正しい理解に繋がればと切に願う。

以下余談。
宮崎駿は施設に頻繁に訪れるという。
「千と千尋の神隠し」でハクが名前を取られてしまったり、
「もののけ姫」でタタラ場に包帯でぐるぐる巻きの患者がいたり。
おそらく本名を名乗れない患者のことなどを表現したと思われる。

ちなみに「日本のゴーギャン」田中一村は、奄美で患者たちに肉親の肖像画を誠意を込めて描いたという。患者たちは、親兄弟に縁を切られる者も少なくなかったので。一村とハンセン病を結びつけたのは、隔離政策を真っ向否定した小笠原登氏。世間がどうあれ、己を信じて戦い続けた者同士というのも興味深い。

うり坊033