劇場公開日 2015年5月30日

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「あんの声」あん 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5あんの声

2016年3月20日
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鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

幸せ

やっとこさレンタル!
首を長~くして待ってました!
本当は劇場で観たかったけど地元では上映されず。隣町の映画館では上映されたものの、「駆込み女と駆出し男」とどっちを観ようと迷い、あちらを選び、レンタルになるまで待とうと泣く泣く断念。
近年半年もしないでレンタルになるのに、年をまたいで10ヶ月。長いよ~!
でも、待ってた甲斐があった!
こういう良質感動邦画が好物の自分にとって、極上のご馳走!
去年中に観てたら、間違いなく年間myベストテン入り!

しがないどら焼き屋を営む千太郎の前に一人の老女・徳江が現れ、働きたいと申し出る。最初は断るが、徳江は50年もあんを作ってきた名人。千太郎もその味に魅了され雇うや否や、店は大繁盛。が、徳江のある秘密が噂になり、店を去る…。

徳江の秘密は別にネタバレでもないし、作品の肝でもあるので記す。
徳江はハンセン病患者だった。
まず、ハンセン病について知っておかないといけない。
かく言う自分も「砂の器」や「もののけ姫」などで何となく知ってる程度なので、Wikipediaで調べたものを抜粋すると…

らい病とも呼ばれる感染症。かつては不治の病と言われたが、今では治療法もあり、近年の日本国内での新規患者数は年間0~1人程度。見た目から差別・偏見の対象となり、強制隔離もされた。

徳江がどんな人生を送ってきたか、想像するしかない。
が、どら焼き屋で働き始めた嬉しそうな顔がそれを物語る。
初めて触れた自由、生きる楽しさ、一人の人間としての尊厳。
徳江はあんを作る時、あんに話しかける。
あんの声、あんが歩んできた道に耳を傾ける。
それは徳江自身にも言える。
私たちにも声がある。自由がある。
それを聞いてほしい。
奪わないでほしい、と。

言うまでもなく、樹木希林が巧い。
彼女特有のちょっととぼけたお茶目さ、自分の祖母を思い出してしまうようなお節介焼き、子供のような愛らしさ。そして、悲しみを内面に滲ませる。
この人が下手だった事など、今まで一度だってあっただろうか。
役への憑依、作品に溶け込む佇まい、存在感…この人の演技の素晴らしさをどう表していいか、言葉さえ見つからない。

永瀬正敏も好演。
演じた千太郎も、実はあるものを背負っている。
世間からひっそりと生きている点は徳江と同じ。
不器用・無愛想だけど徳江への理解ある優しさ、葛藤、終盤の涙は胸を打つ。
店の常連客である女子中学生に樹木希林の実孫娘の内田伽羅、一服の清涼剤。

小豆を水に浸す所から始まるあん作り。
手間暇かけて出来上がったあんが何と美味しそう。
あのどら焼きが食べたい。

ハンセン病は影を潜めた。
が、差別・偏見は残っている。
差別・偏見こそ今尚人々を蝕む不治の病。

近大
レモンブルーさんのコメント
2020年10月13日

共感をありがとうございますm(__)m 樹木希林さんの演技 存在感は本当に素晴らしいですね!! あの方の代わりの出来る役者は 居ない。日本は惜しい方を失ってしまいましたね。
この映画は 個人的な見方で レビューしましたが、私の中では、徳江のあの言葉が一番沁みました。

レモンブルー