劇場公開日 2015年5月30日

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「他者の尊厳を傷つける時、無知はそのまま罪となる」あん rie530さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5他者の尊厳を傷つける時、無知はそのまま罪となる

2016年3月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

ドリアン助川の作品が発表されたのは2013年、そんな昔ではないけれど、この頃でもまだハンセン氏病に対する差別的感覚は残っていたのかな?

普通に生きたかったハンセン病患者、徳江。逝ってしまった彼女のかつての部屋は、失ったというよりも奪われたものたちへの想いがこもっているように見えた。そして自分の作ったどら焼きを美味しそうに食べる少女たちを見る彼女の目はそれは嬉しげに光っていた。奪われてばかりの人生で、与える喜びを見出せたこと。それがどれほど彼女の自尊心を力づけたことか。

自分の家の墓へ埋葬を拒否されることの多かったハンセン病患者は、療養所の中に自分たちの墓地を作った。納骨堂とは別に想い出のための木を植えた。失われた命の代わりに新しい命を作り出そうとでもするかのように。それは、現世で得られるもののほとんどなかった人々が、来世にこそ歓びを得ようとするために、渡す梯子の意味を込めたものだったのかもしれない。

rie530