劇場公開日 2015年5月23日

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「映画としての語り口が見えてこない」サンドラの週末 よしたださんの映画レビュー(感想・評価)

1.0映画としての語り口が見えてこない

2015年5月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

昨年TVで放映したのをたまたま観て素晴らしかった「少年と自転車」と同じくダルデンヌ兄弟の監督作である。
今作も日常の何気ない事象から普遍的な人間ドラマが紡ぎだされた作品であることを期待して劇場へ。
主演は、今やヨーロッパを代表する女優と言ってもよいマリオン・コティヤール。この人は作品ごとに新たな境地を切り拓いていく。それを同時代で観ることができることがうれしい。いつかきっと、彼女のキャリアの中で映画史に燦然と輝く作品に巡りあえることを願っている。
さて、今回の作品はというと、自分が解雇されるか、全従業員のボーナスがカットされるかという二者択一を、従業員による投票で決めなければならないという話。
主人公サンドラは、なんとか自分の雇用を守るために同僚たちを訪ね、一人ずつ説得して回る。彼女に同情を示す者もいれば、自らの苦しい生活のためにはボーナスが必要だと、サンドラの支援を断る者もいる。そして、彼らの経済状況や家庭状況も様々であり、誰が誰を非難することも出来ない。
サンドラが一人ひとりと話をするときの同僚の対応は、世の中捨てたものではないという思いになれる暖かい励ましや、自らの非力を認める謙虚さがあふれている。
しかし、彼らがひとたび共同体を形成すると、これはもう共同体の大多数を守るほうへ動き出していくのだ。その人間社会の残酷な一面を、サンドラの二日間の奮闘を通して描いている。
これがドキュメンタリーだったらとても面白い題材なのだけど、フィクションとしての映画となると、ひたすらサンドラの顔を追うカメラに退屈してしまう。冒頭あれだけ持ち上げておいてこういうのもなんだが、コティヤールはずっと見つめていたいほどの美形ではないし。もっと映画らしい演出が欲しかった。

佐分 利信