怒りのレビュー・感想・評価
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怒り
最後は心の震えが止まらなくなるくらいの名作です。
沖縄が抱える現実問題。ゲイがひとりで生きることの切なさと家族
との関係、社会保障のない若者の社会への反感や孤独などが入り乱れて、普段は目に見えない、いや見ようとしない現実社会に潜む怒りと悲しみ。
この怒りは誰もが持っている「怒り」ではないだろうか?
結局「怒り」は悲しみしか生み出さない。
渡辺謙の背中のシーン、宮崎あおいの「お父ちゃん」っていう
声は何故か都会の真ん中で暮らす人々の心に響く。
それぞれの役者がそれぞれの演技で3つのドラマを1つの映画に
仕立て上げた感じです。
ラストは、直人の遺骨を同じ墓に入れるシーンがあっても良かった
のではないかと思いました。
好きな俳優さんばかりです
1番好きなシーン
妻夫木聡がコンビニ帰りの綾野剛をみて、笑って駆け寄って持ってる荷物を取り上げて
『思う存分 お弁当直せよ』
ですヾ(o´∀`o)ノ
二人のおしりが可愛かったなー
犯人像がわかりにくかったのですが
森山未來 松山ケンイチ 宮崎あおい 広瀬すず よくわからない多分本当の沖縄の男の子 見入ってしまう演技
理解するため
もう一度見に行きますΣ(・ω・ノ)ノ
いろんな人のいろんな怒り
一家殺人事件の容疑者と同じ特徴をもつ3人の男たちにまつわる群像劇。誰が犯人か分からないため、観客は終始疑いの目で3人を見る事を強いられる。疑いの目で見ると、どいつも怪しく危険に見えてくる。登場人物達と同じく、人を信じることの難しさを体感できるだろう。
タイトルの通り「怒り」がテーマだが、怒りといっても色々ある。静かな怒り、激しい怒り、悲しい怒り、憎い怒り、他者への怒り、自分への怒り、社会への怒り。この映画には様々な怒りが出てくる。
他者の怒りは想像はできても理解はできない。怒りという感情一つとっても理解できないのに、他者を理解するなんてのはもはや不可能だろう。だからこそ、信じたい信じられたいと思うのかもしれない。
千葉の寂れた漁港と、息をのむほど美しい沖縄の海の対比もよかったです。冒頭から見る者を惹きつける力を感じ、開始5分くらいでこの映画絶対面白いだろうと思いました。豪華俳優陣の文字どおり体を張った演技も必見です。
ここまで重い題材でPG12?ミスキャスト0の傑作
原作とほぼ同じなのは千葉編。愛子のキャラこそ原作と一番違うが一番目を惹いたのは宮崎あおい。ベテラン俳優はほぼ渡辺謙1人だけというのも珍しいかも。
劇場で聞く大音量の米軍機飛行音を聞くと沖縄の現状に胸が痛くなる。
原作を読んだ上で
原作を読んだ上で鑑賞しました。
小説の時点で凄く感動したので、どうなるかなと思いきや、さすが悪人のタッグ。
映画も感動しました!
しかし、やはり描かれてない部分だったり、最後の展開で田中の告白があったりと、そこが無いからこそ面白いと思ってたので、「原作ファンとして」残念
しかし、映画としては上手く4つの話を繋げけてて観やすく、とてもいい映画でした。
今年の1番でしょう。
「信じる」って簡単じゃない
信じきることの難しさ、信じたものが虚像かもしれない怖さを感じました。
印象的だったのは、山神が辰哉に放った言葉。
「お前は俺の何を見て俺を信じたの」
この言葉を反芻し、自分は何を見て人を信じているんだろうと、映画館からの帰り道自問自答していました。
「信じる」ということについて深く考えさせられた映画でした。
心がえぐられた
この映画の中に複数存在するテーマ、親子・同性愛・はみ出し者同士の恋愛など、それぞれの葛藤を静かにさらけ出されて、観ていて心がえぐられた。
綾野剛の、スクリーンに存在しているだけで庇護欲をかきたてられるような健気な表情が魅力的だった。
松山ケンイチは、死んだ魚のような目をしている中で一時見せる意思の強い目にはっとさせられた。
広瀬すずの暴行シーンは衝撃的だった。
緊迫した空気と絶望感がひしひし伝わって、ここまで全力で演じるのかと女優魂を感じた。
その後、母親とベッドで眠っているシーンの愛くるしさと穢れのジレンマに心が引き攣る感覚があった。
宮﨑あおいはとても好きな女優だが、どうしてもすっぴんが気になってしまった。
大スクリーンに映し出されるシワやシミ。
どうみても30代だけれど、この役の設定年齢は何歳なのだろう?と考えてしまった。
広瀬すずとの対比でことさら加齢が目立った。
すっぴんという「設定」でコンシーラーや薄いファンデーションを塗ることすら許されなかったのだろうか。
ストーリー以外のことに観客の気をそらすほどのすっぴんはいかがなものかと思ってしまう。
また、どうしても宮﨑あおいが「バカ」にみえない。「バカを演じている」ようにしか見えなかった。
こういう人種の人が腹式呼吸でしっかり発声しているイメージがない。
話し方がふにゃっとしていても、宮﨑あおいの芯があるよく通る声に違和感があったのかもしれない。
一番気になったのは、広瀬すずの相手役の無名の役者。なぜこの役者を選んだのだろうか。
後半にかけて感情を前面に出すシーンの演技はまだ観れるが、「普段」の演技が正直いかがなものかと思う。
居酒屋で酔っ払うシーンは、観ていて特に「なぜこの役者をキャスティングしたのだろう」という疑問ばかり浮かんで現実に引き戻された。
怒り
見終わって思うのはどこにもぶつけられない・ぶつけても消化されることはない「怒り」が東京、千葉、沖縄のキャラクターに共通するものなのかなと。
東京編の良さは綾野剛さんが全て持っている気がします。
囁くような声と薄い体と白い肌で普通の人より一層存在が儚い感じが演出されていて、ふらっと消えてしまったかと思ったら死んでるなんて思わないでしょ。犯罪者かも、って疑ってたんだからより衝撃が大きかった。
2人は出会いこそ気まぐれだったのかもしれないけど、
この作品の3つのお話の中では一番やさしいお話しで、
妻夫木さん演じる優馬の自分の疑ってしまった気持ちに対する怒りがとても悲しい。
墓地での「一緒の墓入るか」って言葉と、その後の回想で2人窓際で外を眺めながら幸せそうに直人が「一緒は無理でも隣ならいいな」って呟くように言ったときは泣いた。
なんで病気だった事を言わなかったのかを考えると、
綾野さんが演じた役の直人視点から考えて治らない病気なのに言ってもしょうがないとか、愛したから悲しませたくなかったとか、考えるだけで悲しい。
「疑ってるんじゃなくてさ、信じたいんでしょ。」ってセリフが後になって涙腺にくる。
沖縄編は広瀬すずさんがすごく印象に残ってる。
モデルをやっている雑誌もCMも見ているし、生で見たこともあるけど演技については少しのドラマでしか知らなかったから、こんなにすごかったっけとドキドキするような演技でびっくり。
辰哉がお酒をこぼしてしまうシーンは予定外でアドリブで続けたハプニングカットがそのまま使われているらしくそれにもびっくり。
演技のリアリティがありすぎて目をそむけたくなるようなシーンもあったけど広瀬すずの演技力に目を背けられませんでした。でもしんどい。
森山未來さんが演じた田中は無造作に伸ばした髪や髭が少し不気味でどこにでもいるような雰囲気をまとっていた。
でも無人島にいることや、「誰もにも言わないで(ここにいることを)」というセリフ、泉に「田中さん」と繁華街で呼ばれたとき反応が遅れたことと驚いていたことから考えると一番怪しいですよね。
殺害の犯人として周りから疑われることもなかったし、
周りに信用されて信頼されていたからか、田中の「なんで信用できるの」っていうセリフでガーンとなりました。
優しい言葉をかけたり自分に刃をあてていたり、逆立ちになったり、気がくるっているおかしい人なんだってのが不気味でした。辰哉が怒りを表して田中を殺したけど多分その怒りはどうしようもないもので、田中を殺したからと言ってなくなるわけでもなくて、泉に関してもきっとそうで警察に通報しても、誰かに話してもどうにもならない怒り。
千葉編は渡辺謙さん演じるおとうちゃんの宮崎あおい演じるアイコへの愛情が痛いほど伝わってきた。第一に心配する気持ちが大きくて、アイコ自身のことや、素性の知れない田代と娘のアイコが距離を縮めつつある事。お父ちゃんの悩んでいるのがひしひしと感じ取れた。
お父ちゃんが田代に言った「あいつすこしおかしいんだよ(うろ覚え)」セリフはアイコの知能の事をいっているのかな?感じているものが当たっていれば、小さい子供から目を離せない的な。
でも、それをわかってアイコといると「落ち着く」、
「なんでも話してしまう」と言った田代とアイコの間には2人にしかわからないような空気感があったんだなと。
千葉編に関しての「怒り」はアイコじゃなくて渡辺謙演じるお父ちゃんが感じたもの。疑ってしまったばかりにアイコを惑わせてしまった自分への怒り。
宮崎あおいのすっぴんであどけない雰囲気に、泣き狂った演技が印象強い。
終わり方としては3編とも何ともいえない感情が迫って来る。つらいとか悲しいとかしんどいとか。
私は綾野剛さんと妻夫木さんの東京編を楽しみに見に行った映画だったのですが、想像以上にすごいものを見せられてしまった感が半端ない。LINEliveで渡辺謙さんが言っていたように東京編が一番純愛だったんですが、整理しながらここに書いていると悲しくて泣きそう。行為後のよだれとか、コンビニでお弁当と一緒に男と使うための避妊具買ってる綾野剛が最高だったのをメモしておきます。
疑問を投げかけるとしたら、電話で話していた空き巣の件と夫婦殺害の動機ですかね。動機なんてものはない。ってのもありだと思っています。
各俳優陣の演技にリアリティがありすぎてスクリーンに飲み込まれているような感覚を持ったシーンも何度かあった、ミステリーというより人間ドラマだった、人を愛すること、信じることが何を生むのか、信じるために何をするのか、考えさせられる作品でした。
ある一定量の面白さは保証してくれる李監督
物語がものすごくゆっくり進行していくんだけど、停滞する所がない。
3つの物語それぞれが、しっかり独立しているし、そのバランスもすごく良かった。
監督がインタビューにて、停滞しない様に心掛けた、バランスが保たれる様に気をつけた、と言っていたが、とても上手くいってると思う。
なんか思わせぶりな映画だな〜とも言えるけど、ミステリーとして純粋に面白かった。
実力派を掻き集めてるキャスティングはいいし、元々の原作もまぁ良いし、音楽も坂本龍一氏の彼らしいメロディがとてもいい。
特にキャスティングに関しては、こちらが思う、この役者さんはこのぐらいまで見せてくれるだろう、という無意識の予測を、それぞれ少しづつ越えてきてくれた。
このタイミングで広瀬すずをあの役にキャスティングし、覚悟を決めさせたのには驚いたし、妻夫木聡をゲイ役にキャスティングしたのも、誰もが妻夫木聡に思うイメージを拡大してくれた感じでバッチリだったし、放浪の旅から帰ってきたばかりの森山未來をバックパッカー役に当てたのも間違いない判断だし、誰もがもう見たくない松山ケンイチのおバカギャグ映画の側面を一切許さず、徹底して松山ケンイチの一番の長所である暗い目だけを見せ続けてくれたのは、李さんは役者の使い方がよくわかってる。観客目線で役者を理解してるな、と思う。
中心に大黒柱 渡辺謙を置くところなんかもそりゃ間違いないに決まってる。
カメラや照明や編集に関しては、どれも奇抜な事は一切せず、クラシカルな方法でしっかり押さえてくれている。
何だか、周りの技術スタッフや役者陣に助けられている様に感じるのは、否めない…
いや、でもこれも監督としての腕なのだろう…。
李監督の映画って模倣してるパターンが多い様に感じる。フラガールはリトルダンサーに似ているし、許されざる者はリメイク、今回のタイトル「怒り」も「渇き。」を彷彿させるし、3つの異なる物語が同時進行で描かれるという点では「バベル」っぽいなぁ〜とか思った。まぁ原作がそうだからなんだけど。
でも日本映画の中で、李監督の作品は一定の面白さを保証してくれる監督なのは間違いない。
カメラワークや演出、編集などをとってもクオリティの高いものを必ず出してくれるから安心して見られる。そういう意味ではタイプは違うけど是枝監督みたい。信頼できる。
ただどうしても、どこか重い風であり、良い映画風なだけな感じがする。なんか煙に巻かれてるような感覚。
この映画を見た人達が「なんか考えさせられた」って感想だけで完結しちゃってるのがその象徴。具体的な感想が出ないんです。
そんな事もあって、俺はまだ李監督をちょっと掴めないかな。
化けの皮が剥がれない感じがする。
一言では語れない
泣いた。エンディングの坂本龍一の音楽でボロボロになるほど泣いた。それだけ凄い作品だった。
どういう展開になるのか、どういうオチになるのかの予想がまったく出来ず、やっとこ終わりに近づいて、ああこういうことかというそれさえもハズしの、予想を大きく飛び越えた、まさかこういう作品だとは思ってもいなかった。
“怒り”という意味、信じるということ、罪深さ、観終わったあと、映画に張り巡らされた様々な伏線に驚愕するとともに、胸の奥にまでグッと突き刺さる、しばらく震えの止まらない作品でした。「悪人」と並ぶ傑作だと思います。これ以上は語れない。超オススメ!
怒りの意味が。
この映画を見て、タイトルの意味がなるほどと感じれました。
やはり、粒ぞろいの役者達。曲者でした。みんなの好演がぶつかりあってました。
その中でも広瀬すずさん、あの演技、苦しく、悔しい表情。また、レベルが 他の役者に近づいた気がしました。
すごい映画でした。
最後に坂本龍一さんの曲、心にしみてくるトーンで 湧き上がる感情が音になった気がするほどでした。 素晴らしい。
怒りについて考えた
怒りとは、原始感情で本能に近いもので、昆虫でもイタズラすれば怒ったような態度をとる。人間の素晴らしいところはその感情を抑えることができること。日常的に湧き上がってくる怒りの感情とそれを抑える自制心。自制心は、自分をしっかりと信じていないと怒りのコントロールは間違った方向にいってしまう。怒りを抑圧し過ぎることは自分を見失う。自信がないと抑圧し過ぎる傾向にある。また、自身がないと人も信じることが出来ない。社会生活では、怒りが日々湧いてくる。その怒りを抑圧して、初めて立派な社会人ということになる。しかし、抑圧しすぎると自己を見失い。ある時怒りが爆発する。怒りのコントロールは、社会人には大切なファクターということを教えてくれる作品。抑圧していた怒りを吐きだすところは、観ている者の感情を震えさせます。
タイトルの意味
犯人の残した【怒】の血文字ではなく、【怒り】とはそういう事かと。
テレビのインタビューで原作者が、最初から犯人を決めず、物語を書いて行くうちに犯人を決めたと言ってたので、原作読者は確かに犯人はなかなか判らないかもしれない。
しかし、映画はねぇ。序盤から怪しい言動や表情を見せたりしてる2人は、やはり犯人じゃなかったなと。まさに一番怪しくないのが、自分の想像通り、犯人だった。さらに言うと、犯人以外の2人は人との関わり方が深く、逆に犯人は関わりがずっと浅い。故に、あの犯人なのが一番好都合と言える。原作は未読なので判らないが、映画の場合....こういうとこが映画監督の腕の見せ所なんだが。
ま、この映画は、謎解きより違うところに重きを置いてると。実に重くズシンとくる映画だが、人間いや本来の日本人が持つ愚かさ、儚さ、そして屈辱や後悔を明日の糧にする強さ。そこに闇と光を見た。
見えない心、聴こえない怒り 【修正】
まずは一言、重い。
3人の誰が残虐な犯人か?というサスペンスではあるが、
本質は『人を信じる』ということの困難さを描いた作品。
人間不信に陥りそうなほど暗く重苦しい内容だが、
最後には僅かな希望を感じさせる、そんな映画だった。
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メイン・サブ問わず誰も彼もが良い演技を見せる本作。
全員について書くと長大になるので数人だけ抜き出す。
まずは泉を演じた広瀬すず。惨(むご)い場面にも
果敢に挑み、キャスト中でも最大級の純粋な怒りを
叩き付ける。序盤の快活さが一転して絶望的な表情
に変貌する様は見ていて本当に胸が苦しかった。
あまりに無防備な心の持ち主である愛子を演じた
宮崎あおいも、自分を信用しきれない父への静かな怒りを
感じさせる、掲示板前でのあの深く暗い眼が恐ろしい。
娘を守りたいあまりに娘を信じきれない渡辺謙も流石の重厚感。
犯人・森山未来はもはや悪人ではなく邪悪ですらある。
自身の境遇への怒りに満ちた彼にとって、
他者の不幸は胸のすく絶好の物笑いの種でしかなく、
人の優しさは自分への優越感と嘲りの表れでしかない。
だが彼は、内に抱えた怒りを長年誰にも伝えることが出来ず
壊れてしまった人間なのかもしれない。他者への怒りと
蔑みと嘲りで充満したあの部屋が、そのまま彼の心の内だ。
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だが我々はあの男の部屋の中に入る術を持たない。
あの心の内を直接覗き込む手段を持たない。
あまりにも当たり前で、あまりにも不幸な事実として、
人の心は目に見えない。
この物語で起こる悲惨な出来事の根幹はすべてそこだ。
相手をどれだけ慕っていようが愛していようが、
他者の本心や過去の全てを知ることはできない。
そして、見えないものを信じられるかどうか
判断することは、誰にとっても恐ろしく難しい。
だから、信じきれずに裏切ってしまう。
あるいは、信じていたのに裏切られてしまう。
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自分の身に降りかかった事に対する怒り。
あるいは、信じていた人に裏切られた怒り。
他方、信じてくれた人を裏切ってしまった後悔。
人の体の肉は柔らかいが、心は分厚く硬い。
直人と優馬のように、どれだけ強く
抱き合っても決してひとつにはなれないし、
泉や愛子が言う通り、泣いても叫んでも、
怒りは他人の心には伝わり切らない。
けれどもだ、泣くことも叫ぶこともしなければ、
その怒りは千分の一、万分の一すらも伝わらない。
怒りを表に出すことは、時に尋常ではない勇気を
要するが、己を守る為にも、誰かに守って
もらう為にも、それはきっと必要なことなのだ。
逆に、慕っている人を裏切ったという
後悔に苛まれた者はどうすれば良いのか。
エンドロールで流れる本作の主題歌のタイトルは
“許し”だった。“怒り”に対しての“許し”。
「今度こそ守るから」という愛子の言葉に
オーバーラップする、泉の怒りの表情。
どんなに悲惨な出来事が起こっても、
どんなに酷い事をしでかしてしまっても、
我々は時を巻き戻すことが出来ない。
我々に出来るのは許しを乞うことだけだ。
今度こそ裏切らないから。
今度こそ信じてみせるから。
今度こそ絶対に守るから。
そう約束し、ひたすら許しを乞うことしかできない。
歯痒いけれど、それで相手が心に負った傷をほんの僅かでも
癒せるならと信じ、必死に許しを乞うことしかできない。
最後、
薄汚い言葉を必死に削り消そうと
してくれた人の名を呟く泉。
打ち寄せる波に掻き消されそうになりながらも、
微かに、だが確かに聴こえる彼女の絶叫。そして、
帰路の列車で穏やかな表情を浮かべる愛子と田代。
どん底に重い物語ではあるけれど、それでも
この物語では、最後に薄らとした光が見える。
それはきっと、前に進み続けることでしか目に入らない光だ。
直人の最後の台詞。あれはある種の諦めでもあるし、
『それでもどこかで人は繋がっていられる』
という希望でもあったのかもしれない。
「一緒は無理でも、隣ならいいよな」
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泉の母についてもっと詳しく描いてほしかったとか、
やはりあの犯人像がややカリカチュアされて感じるとか、
妻夫木&綾野パートが他パートと比べてやや弱いとか、
細かな不満点はある。
だがそれでも、暗く力強く人を惹き付ける映画。
素晴らしい出来だと思います。4.5判定で。
<2016.09.17鑑賞>
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