劇場公開日 2016年9月17日

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「分断の時代に、信頼をどう築くか――インスタ映えでは測れない人間の本質」怒り 林文臣さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5分断の時代に、信頼をどう築くか――インスタ映えでは測れない人間の本質

2025年7月30日
iPhoneアプリから投稿

映画『怒り』は、ひとつの未解決殺人事件を軸に、東京・千葉・沖縄という異なる場所で交差する人々の心の機微を描いた重厚な群像劇だ。この作品が私に突きつけてきたのは、「人を信じる」ということの難しさと、それでもなお信じようとする“覚悟”の価値である。

経営者として、日々多くの人と関わる中で、信頼関係の構築は最も重要な仕事のひとつだ。SNSが普及し、インスタグラムなどで“映え”を優先する世の中では、人の表面的な印象や肩書きに騙されやすくなる。だがこの映画では、どれだけ側から見て“いい人”に見えても、人の中に潜む怒りや闇は隠されている可能性があることを容赦なく突きつけてくる。これは経営にも通じることで、履歴書やSNSの発信では見えない“本質”を見抜く力が問われる。

登場人物たちは、恋人、家族、同僚といった関係の中で、互いを信じきれずにすれ違っていく。特に、沖縄編のストーリーでは、ある青年の過去と向き合いきれないことが、周囲に痛みと疑念をもたらす。この“信じたいのに信じきれない”という葛藤は、どんな組織でも起こり得る。企業が成長するには、個の力だけでなく、「誰かを信じる力」こそが根幹になるのだと強く感じた。

インスタのように綺麗に加工された世界ではなく、生々しく不完全な人間の本音と向き合う勇気――それこそが、真に強いチームをつくる礎であり、経営者として求められる資質だと、この作品は教えてくれた。『怒り』は、ビジネス書よりも深く、“人と向き合うこと”の重さと覚悟を語っている。

林文臣
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