「タイトルなし(ネタバレ)」怒り まゆうさんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし(ネタバレ)
「国宝」の監督なので、ちょっと観てみようと。原作未読。怒り、人を信じるという事について。
最初に怒りの感情が湧いたのは、序盤の宮崎あおいの役に対して。正確に言えば何となくモヤっとするな…くらいだが、その正体が怒りだと気付いてハッとした。まるで壊してもいいオモチャのようにボロボロにされ、酷い扱いを受けているのに、ヘラヘラ笑ってる。境界領域タイプかなーとか、事情を想像してみるものの、父親の渡辺謙が何にも言わないのもやっぱり苛立つ。「諦め」と、「怒っていても言えない」という図式が少しずつ見えてくる。そこで、やっとオープニングの殺害現場に残された血文字を思い出す。思わず目を背けたくなる凄惨なシーンだが、鑑賞者がしっかりとテーマに向き合うように促される。
最初に鑑賞者に怒りの感情を芽生えさせることで、他人事ではなく、自分の事として映画を観れるように作られている気がして、上手いなと感じる。また、「犯人は誰で、一体何に怒っていたのか?」という疑問とともにストーリーを追っていくことになるので、最終的にそれが解明されるであろうという明確なゴールが提示されているのも良い。この映画は話が群像劇のように結構あっちこっち飛ぶのだけど、ゴールを頼りに迷子にならずに鑑賞できる。
怒りの感情は、難しい。
ある程度コントロールできないと、極端な話、犯人のように罪を犯しかねない。犯人が、怒りに任せて宿泊客の荷物を屋外へ投げ捨てるシーンでも重ねて描かれている。
犯人と違って、他の登場人物たちは、本当はすごく怒っていても、それを表立って出すことはない。やっぱり犯罪を犯すような人は異常で頭おかしくて、普通の人はちゃんと社会性をもって怒りをコントロールできるん…
いや、ちょっと待てよ。
コントロール出来てるのか?
単に諦めてるだけじゃないのか?
登場人物たちは軒並み色んなことを諦めている。それは置かれている状況を見ても、セリフからも、表情からも、何度も繰り返し描かれている。言えないもどかしさ、苦しみも丁寧に描かれている。
監督から、ねぇ、日本人て、もっと色んなこと諦めなくていいんじゃないの?て言われてるような気持ちになった。犯人のように怒り狂ってもっと暴れろよ!と言ってるわけじゃないのだ。現実に私たちに起きている、「目を背けたくなるようなこと」を突きつけてる。そういう感じがビシビシ伝わって来た。だからこそ、オープニングの犯行現場のシーンは、鑑賞者の私たちにとって強烈である必要があるのかもしれない。
綾野剛は、「悲しみ」みたいな感情を強く感じまた。怒りって、悲しみとセットみたいなとこある。大切な人に信じてもらえない辛さ。
先日見たYouTubeで、台湾のオードリータンさんが「筋肉を鍛える必要がある」って言ってたことを思い出した。その人が信頼できる人なのか見極める力の話で、ネット上だけでやり取りしてても、そういう筋肉は育たないよねという。
渡辺謙が言われてハッとするシーン、
「あの子が幸せになれるわけないって思ってるの?」も良かった。グっサーッと来ました。何を幸せと呼ぶかは、人それぞれありますけど。
佐久本宝さん?初めてお名前を知りましたが、一番驚きました。彼凄い。見つけてくる人も凄いよなァと思ったり。
個人的には、え?誰が犯人なの??て脳内で翻弄される感じは丁〜〜度良い塩梅でした。よく出来てるなという印象の作品でした。