「弱い立場で生きるということ」怒り NORAさんの映画レビュー(感想・評価)
弱い立場で生きるということ
世の中の不条理さ。社会の息苦しさ。
登場人物全員が弱い立場の人間。
どんなに苦しもうが怒ろうが解決することができない状況にいる。
田中について
・田中の自己評価
⇒いい歳しているのに日雇い労働で自分に負い目を感じている。実はものすごく繊細で世間の反応に敏感な人間。
・田中の家の壁中の文章
⇒ただ単純に世間を見下しているわけじゃない。
書いてある内容について物凄い怒りを感じているが怒りを発散させる場所がない。
若者がツイッターに馬鹿にした口調で愚痴を書くのと同じ感覚で
文字に起こして馬鹿にすることで怒りを納めていたのだと思う。
・殺人動機
⇒派遣会社の人からゴミ扱いされ、自分はゴミ以下の人間なんだと傷心しているところに、優雅な専業主婦に同情され格差を思い知らされ、世の中の不平等さに怒りを感じ我を失って殺してしまう。夫は逃げる為に殺すしかなかった。
「怒」という文字は人を殺してしまった自分への怒りと殺人を犯してしまうほど理不尽な世の中に対しての怒り。
・最後のシーン
結局田中は実は心優しすぎる人間なのではないか
優しすぎて社会の不条理さがとっても良く見えてしまう。
離島に逃げたはずなのに、ここでも不条理なことが起きる。
自分がしてしまった事から自分でもも逃げれない。
「味方でいるから」は本心だと思う。
一生懸命ホクロをハサミで取ろうとしてたのも、自分がしてしまった事に対してパニックになって自分を痛めつけることで気持ちを落ち着かせようとした。
けど、たくやが来てしまった。
殺人をしてしまったし、泉がレイプされても助けられなくて、でもその気持ちをどうコントロールすればいいか分からなくて気狂いになった。
泉の「泣いたって怒ったって誰も分かってくれないでしょ」
本当にその通りだと思った。弱肉強食の世界。弱者はどんなに泣こうが騒ごうが誰も助けてくれない。