「それぞれの怒りの交わる原点」怒り KUさんの映画レビュー(感想・評価)
それぞれの怒りの交わる原点
様々な怒りがこの映画には立ち込めている。矛先をどこに向けていいかも分からない、報われない怒りが満ちている。信じてしまったことへの怒り、信じることができなかったことに対する怒り、更には政治的要素を孕むが米軍基地や米兵を巡る理不尽に対する沖縄の人々の怒り。
そしてそれらが集約されているのが、殺人犯山神の怒りであると思う。山神の怒りは、現代社会の中で生きる人間誰もが抱き得る、やり場のない、根拠不文明な怒りが、ちょっとしたきっかけで頂点に達し爆発したものととれる。社会の中で弱い立場にいる人間が、いや相対的には強い人間もが、より強い人間との間に感じている理不尽さ、そしてそれに対する怒り。現代ではネットでの激しい誹謗中傷悪口雑言の数々に見られるように、皆が心に怒りを溜め、それをどこかに悪意として吐き出しながら生きている。泉を助けずに遠くからその様子を笑いながら見ていた山神は、まさしくその悪意の塊のような人物として描かれているのだ。
脚本が凄い、こんなに衝撃を受けたのは久々です。
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