「動悸が激しくなる」怒り MASERATIさんの映画レビュー(感想・評価)
動悸が激しくなる
上映終了後、座席からしばらく立ち上がれなかったのは久しぶりだ。怖いや悲しいなどの感情のみではなく、それらが混ざり合った複雑な感情が押し寄せて胸を締め付けた。原作は読破済みだが、映像化された作品を目の当たりにすると、衝撃はさらに強くなる。
後半はやや原作とは違う展開を迎えるが、原作で気になった箇所が明白に描かれていたりなど、観客をモヤモヤさせないような構成になっており好感触だ。
実力のある俳優陣の演技は非常にリアリティを感じさせるものであり、見ごたえがあった。役柄でここまで変われるのかというほどその役になりきっている様は感動すら覚える。
3つのエピソードは、「愛する者が殺人鬼かもしれない」というテーマの繋がり以外、物語としての繋がりはない。変わりに、3つのエピソードはそれぞれに問題を抱え、切ない物語が展開されていく。原作もそうであったように、物語は途切れ途切れに描かれ、良いところで画面が切り替わり、別の物語が始まるため、やや理解に苦しむ場面もあるのは事実だ。よって鑑賞前か鑑賞後に原作を読むとより分かり易いと思う。
最後に、本作はながら見には向いていない。鑑賞する際はじっくりと、1シーン1シーンを大切に見てほしい。
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