「一瞬たりとも目を離せない」怒り flying frogさんの映画レビュー(感想・評価)
一瞬たりとも目を離せない
胸ぐらを掴まれて視線と聴覚を画面に縛り付けられてるような映画。とにかく一瞬たりとも目が離せず、気が抜けない映画。
俳優陣は誰がというわけではなく、全員が鬼気迫る演技で、画面から目を離すことを許さない。最後にちらっと出てきただけの高畑充希でさえ、視線の泳ぎ方、微妙な唇の震えでセリフ以外で感情を表現する。目が離せない。
全員「上手い」俳優なのはもちろん知っていたが、確かに1人でも力量が劣るキャストがいると、それがどんな端役でもそいつが出てきた瞬間に全てが崩壊するだろうな、と思うほど張り詰めた映画だった。
そういう意味で驚いたのはやはり広瀬すず。
彼女の力量は疑ってなかったが、この張り詰めた映画の中でこの役をやれてしまうというのは、常に予想の上を行く人。どこまで化けるんだろうね、この人は。
達哉役の佐々木宝にも驚いたけど。田中と泉を繋ぐだけの役回りかと思いきや、メインキャストと言って良いくらいの重要な役だったとは。それをこんな新人がやってしまうとは。
話は軽々しく感想も言えないほど、深くて重い。
こんな重いものを正面から投げつけてきて、結論めいたものを提示するわけでもなく、後は1人1人が考えな、と突き放すやり方は、まさしく吉田節炸裂(笑)
この映画、仮にまったく何の予備知識なしに観ても、「これ、吉田修一が原作でしょ」って分かったと思う。
裏切られた痛み、裏切った痛み、何をどうしても痛いけど、それでも人生は続く。
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