「人を信じるとは」怒り 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
人を信じるとは
凄惨な殺人事件の犯人らしき3人の男たちの話だ。
テーマは人を信じられるかどうか、ということだと思う。人を信じるというのはどういうことか、その人の言葉を信じるのか、人格そのものを信じるのか。非常に哲学的なテーマである。
映画では、3人の男たちはそれぞれに周囲に嘘を吐く。嘘を吐かれてもなお彼を信じられるかどうか。人を信じるというのはオールオアナッシングではなく、程度の問題であったりする。そして信じている度合いがそのまま自身に跳ね返り、人間性の限界が問われる。男たちと関わった人物は、ハラハラと泣いて彷徨い、或いは慟哭する。とても難解な作品で、グロテスクな表現もあるが、非日常の極限状況をストレートに描写していて、追い詰められた人間性のありように迫っていく。
こちらが精神的に弱っているときに観ると、心臓を鷲掴みにされるような衝撃を受ける。観るにはエネルギーが必要だ。人間の関係性について極論ともいえる状況下での振る舞いを、冷徹に現実的に描く秀作である。
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