「心がえぐられた」怒り ななここなさんの映画レビュー(感想・評価)
心がえぐられた
この映画の中に複数存在するテーマ、親子・同性愛・はみ出し者同士の恋愛など、それぞれの葛藤を静かにさらけ出されて、観ていて心がえぐられた。
綾野剛の、スクリーンに存在しているだけで庇護欲をかきたてられるような健気な表情が魅力的だった。
松山ケンイチは、死んだ魚のような目をしている中で一時見せる意思の強い目にはっとさせられた。
広瀬すずの暴行シーンは衝撃的だった。
緊迫した空気と絶望感がひしひし伝わって、ここまで全力で演じるのかと女優魂を感じた。
その後、母親とベッドで眠っているシーンの愛くるしさと穢れのジレンマに心が引き攣る感覚があった。
宮﨑あおいはとても好きな女優だが、どうしてもすっぴんが気になってしまった。
大スクリーンに映し出されるシワやシミ。
どうみても30代だけれど、この役の設定年齢は何歳なのだろう?と考えてしまった。
広瀬すずとの対比でことさら加齢が目立った。
すっぴんという「設定」でコンシーラーや薄いファンデーションを塗ることすら許されなかったのだろうか。
ストーリー以外のことに観客の気をそらすほどのすっぴんはいかがなものかと思ってしまう。
また、どうしても宮﨑あおいが「バカ」にみえない。「バカを演じている」ようにしか見えなかった。
こういう人種の人が腹式呼吸でしっかり発声しているイメージがない。
話し方がふにゃっとしていても、宮﨑あおいの芯があるよく通る声に違和感があったのかもしれない。
一番気になったのは、広瀬すずの相手役の無名の役者。なぜこの役者を選んだのだろうか。
後半にかけて感情を前面に出すシーンの演技はまだ観れるが、「普段」の演技が正直いかがなものかと思う。
居酒屋で酔っ払うシーンは、観ていて特に「なぜこの役者をキャスティングしたのだろう」という疑問ばかり浮かんで現実に引き戻された。