「心の叫び、卵の中身」心が叫びたがってるんだ。(2015) じゅんさんの映画レビュー(感想・評価)
心の叫び、卵の中身
普通に泣けました。物語はまあ普通かもですが、演出と音楽の仕掛けが本当に素晴らしく、純粋に映画として良作だと言えます。
作画も人物の動きなどとても丁寧で気になるところはありません。
迷っている方がいたら是非勧めたい作品です。
「心が叫びたがってるんだ。」このテーマは随所に出てきます。各々の視点から様々な叫びが交錯していき、ミュージカルに至っていく。
それは作る側だけでなく観る側もそうで、また見せ方も上手いなぁという所が演出や声の演技・絵の演技それぞれ多々あったように思います。
だからこそ物語が~とか何が~とかでなく、映画として優れた作品だと感じたんだと思います。
「あの花」スタッフによる作品ということで期待して観に行かれるような方はご存知かと思いますが、岡田麿里さんの脚本は恋愛要素がこじれ気味に描かれるものが多いです。
この作品も例に漏れず、なかなかにこじれていて「ああ、岡田さんだ!」と思いました。
そんな彼女の持ち味を知らずに評判のみで観に行かれた方が面食らったのも無理はないのですが、今作の見所はそこではないのでその点にこだわってしまって減点してしまうのはもったいない見方だなぁと思います。
個人的に強く印象に残っているシーンは、クライマックスで成瀬が探しに来た坂上や、彼と付き合っていた仁藤の事をこれでもかという程悪くいいまくるシーン。
「なんて自分勝手な!」と思うかもしれませんが(というか普通は思いますね…)そもそも彼女は「言葉は他人を傷つけるもの」と思い込んでいるわけで、今まで心に溜め込んでいた卵の中身をぶちまけるように叫びまくるとしたらああいうことになるのはまあ考えられることなのかなと思いました。
重要なのはそこですべて聞いてくれる人がいるかどうか。
ホント、ちゃんと聞き遂げた坂上は偉いなぁと思いました。
卵の殻で傷つけるだけ傷つけて全てを出し切って「もう言うことがなくなった」という彼女は始めて卵の中身「好き」と言えたのではないかと思います。
個人的に田崎がめちゃイイ奴で好きです(ラストいきなりの告白変化球も野球部エースならではだったのか?!)。
でも出てくる人たちみんないい人。
だけど順の父親には擁護のしようがありませんよね!