「坂上君はカウンセラー」心が叫びたがってるんだ。(2015) あんじぇらさんの映画レビュー(感想・評価)
坂上君はカウンセラー
とりあえず、主要人物のメンタルが強いと思った。
たとえば、肘をやらかした野球少年、田崎くん。あんなにクラス全員の前で「実行委員なんてやってられねー!」と豪語していたのに、後日前言撤回。超意欲的になって急に仕切りだす。なおかつ一番タルそうなミュージカルをやろうと宣言してくる。すごい。
委員長と坂上君も、なかなかだけどまあ、とりあえず置いといて、主人公の成瀬が、もうすごい。すごいとしかいいようがない。
まず、今までほとんどしゃべったことがないにもかかわらず序盤にクラス全員の前で歌い出す。私だったら、恥ずかしすぎてその足で火星まで飛んでいきたくなるけど、真面目な彼女は一度お手洗いに引っ込んだ後に、ちゃんと授業に戻ってくる。えらい。
まあ、他にも諸々あるけど、あの舞台の脚本をみんなの前で発表するところとか見てるこっちが「おお、、」となる。あまりにも、内容が赤裸々すぎないか?「言葉を失った女の子」ってどう考えてもお前じゃん。王子様って坂上君じゃん。ほぼ実録じゃん。公開処刑じゃん。そのあと、委員長と坂上君との痴情のもつれがクラスメイトのばれてることが、さらにこの舞台を黒歴史にしている。
終盤、フラれちゃってふてくされている成瀬を坂上君が説得しに来るシーン。もう、あれはどう見てもカウンセリングだった。そう、「呪い」うんぬんなんて言っている暇があるなら、彼女はさっさとカウンセリングにでも行くべきだったのだ。
なかなか理不尽な文句を言い出す成瀬に対して、親身に受け入れる坂上君の対応には目を見張るものがある。その忍耐強さと患者に入れ込み過ぎないドライさ。あのシーンを見て、彼の中に眠る心療内科医の才を見て取った観客も多いのではないか?(心療内科医のことよ―知らんけど)
ラストが王道じゃなくてガッカリとかなんとか言われてるけど、成瀬と坂上君はカウンセラーと患者みたいなもんだから。心のケアに回ったうえに恋愛におけるパートナーにまでなれというのは少々、酷でしょう。
正直、あんな自分の内面をさらし出して、裸でぶつかり合うようなような人間関係を築いたことがないので見ていて尻のすわりが悪い感じがした。
成瀬の弱さを知ったうえで許し、受け入れてくれる坂上君はマジでいい奴だ。あんな子と友達になりたいが、なかなかいねーだろーなー。