「風に立つ人間。」風に立つライオン ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
風に立つ人間。
さだまさしの楽曲を聴いたのはいつだっただろうか…はるか昔
であるのは間違いないが、当時これが実在の医師がモデルだと
彼が言っていたのを覚えている。その後この曲にインスパイア
された大沢たかおが、さだに小説化→映画化を希望宣言し実現。
なので企画段階からはかなりの年数を経ているのだそうだ。
しかし何より今作の監督が「三池崇史」というのに一番驚いた。
テーマは「心のバトン」なのだが、その意味が最後に理解できる。
冒頭で震災直後の瓦礫の中に種を持って立つアフリカ人が映る。
これが誰なのかを想像させて、物語は過去をインタビュー形式で
回想する形で始まる。主人公の島田航一郎を語る医師や、友人、
恋人らの証言で彼の現地での医療活動やその経緯が語られるが…
ケニアの地で医療活動を行う医師。長崎で診療所を継いだ医師。
お互いが医師であるがゆえ、進むべき道が分かれてしまった二人
と、彼らの支えともなっていく患者たち。どこの国のどの地での
医療活動であっても、患者の命を救おうと日々奔走している医師
が沢山いることを忘れてはいけないなと思う。彼らのおかげで
助かる命は数多い。少年兵士といえばアメリカン~でも描かれた
武器を手に取る子供達が於かれた悲惨な状況が目に浮かぶのだが、
実際にンドゥングのように心と身体を蝕まれた子供達が存在する
ことをもっと考えなければならない。命を救うには殺戮を止める
ことが先行の課題であるのにそこが進まない。この腹立たしさ。
「頑張れ」は自分を鼓舞する言葉で、群れから離れたライオンは独り
風に向かって立たねばならない。自分を危険に晒すのも救うのも
本当に自分自身なのだということが明確に表現された作品だった。
(簡単に命が奪われる殺戮が繰り返される現状を、どうすればいい)