劇場公開日 2015年7月18日

「映画鑑賞の原点」HERO みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0映画鑑賞の原点

2022年8月27日
PCから投稿

楽しい

知的

最近、人気TVシリーズの映画化作品が苦戦している。スケールを大きくしようと気負い過ぎて、荒唐無稽になり、折角の作品コンセプトを台無しにしてしまうからだと思う。そのような状況の中で、本作は、取り上げる犯罪を巨悪化せず、犯罪に大小はないという作品コンセプトを活かした映画化に成功している。

本作は、木村拓哉演じる型破りの検事・久利生公平を主人公にした人気TVシリーズの劇場版第2弾。ある大使館近くで発生した不審な交通死亡事故。主人公は大使館内部の人間が関与していると推理し、治外法権という壁に立ち向かい、仲間と協力して真相を究明していく。

何が起きても揺るがない正義感。真相を究明するまで決して諦めない粘り強さ。他の主演作と同様に、木村拓哉の個性がそのまま主人公の人物像に投影されている。特に本作では、主人公のイメージに彼の個性が見事に嵌って主人公の存在感が際立っている。また、TVシリーズでお馴染みの芸達者な顔ぶれによる息の合った演技は、小気味よく安心感がある。その個性的な雰囲気のマンネリズムは「踊る大捜査線」を彷彿とさせる。

最近の映画鑑賞はマナー遵守が浸透して、以前に比べ様変わりしてしまった。しーんと静まりかえった館内。私語は論外であり、咳払いすることさえ憚られる雰囲気。いつから、映画鑑賞はクラシックコンサートのような厳粛なものになってしまったのだろうか。やはり映画は大衆芸術であり、市井の雰囲気の中で楽しみたいと常々感じていた。

本作は、そんな映画鑑賞とは一線を画したものだった。上映が始まると、スクリーンに写し出される映像に、観客が一体となり反応して感動を共有していた。観客の反応が作品に活力を与えていた。TVシリーズファンである、日頃あまり劇場に足を運ばない観客が多かったと思うが、あれこれ考えずに、素直に観て、素直に感動する姿に、映画を観始めた頃の自分を思い出した。映画鑑賞の原点を再認識できた作品だった。

みかずき