「共感できない…」オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分 うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)
共感できない…
移動中の男の車の中だけでストーリーが進行していく、ワンシチュエーション形式の映画。トム・ハーディが演じるとあって、大いに期待して見たのですが、終わってみると徒労感だけが残る、なんとも後味の悪い一本でした。
舞台劇を映画にアダプテーションしたときにこの形式は多いのかなと思います。ストーリーを凝縮し、登場人物を最小限に絞り込み、少ない予算で制作できるメリットがあると思いますが、諸刃の剣。この映画のように、私小説で、起こる出来事が等身大で飛躍の少ない展開だと、観客は置いて行かれ、退屈な日常の描写にうんざりさせられることになります。
しかも、この男のとる行動が、個人的にはまったく共感できないことだらけなので、冒頭からイライラさせられっぱなし。あえてネタばらしするなら、最後までスッキリすることなく終わってしまいます。
以下、
・職場放棄をする
・その理由があまりにも身勝手すぎる
・それによってあまりにも多くの人に実害が及ぶ(おそらく一万人単位で)
・家族を優先するという価値観に共感できない
・その家族すら浮気相手の出産に立ち会うというトピックに勝てない
・男が浮気相手を愛していない
・とりまく人物の行動も理解に苦しむ(特に巨大建造物の生コン注入管理の職場に、飲酒癖のある人物が日常的に存在すること)
・観客にある期待を抱かせる(自動車事故)が、なにも起きない
・それでいて、奇跡のような事態の打開もない
・せめて、何かひとつでも希望を持てるような事が起きない(おそらく苦難の人生が待ち受けるであろう赤ちゃんの産声すら、電話の向こうにむなしく聞こえる。そう、立会い出産に、間に合わないのだ!!)
このような理由により、この映画、私は嫌いです。
2016.3.24