劇場公開日 2015年5月29日

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アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生 : 映画評論・批評

2015年5月26日更新

2015年5月29日よりTOHOシネマズシャンテ、TOHOシネマズ新宿ほかにてロードショー

平均年齢79.6歳のファッショニスタたちが教えてくれる「ファッション」のルーツ

93歳の画家、イロナ・ロイス・スミスキンが、自分の赤毛をカットして短く毛並みを揃えた自前の付け睫毛をパサパサと瞬かせながら、「これが、私の望みだったの」と言い放つ。確かに、頭髪と睫毛はできれば同じ色の方がいい。例えば、プラチナブロンドに同じ色の睫毛は焦点がボケまくりだが、赤毛ならギリギリでしっくり来る。そんなイロナを見ていると、髪と睫毛を同じ赤毛で統一して無邪気に微笑む40年後のジュリアン・ムーアを想像して、思わず和んでしまった。

マンハッタンの路上で遭遇したおしゃれシニアたちの素顔に肉薄するブログ発、写真集経由、ドキュメンタリー映画を見て、思うことがあった。装いたいという願望は年齢を超越していることは言うまでもなく、人生の紆余曲折を経て行くプロセスで、服は内面の写し絵であり、ルールのない自己表現だと。流行と年齢の間で、いつしかコンサバティブでディフェンシブになりがちな服選びの過ちを指摘し、修正させてくれる、平均年齢79.6歳のファッショニスタたちに心から感謝したい。そして勿論、彼女たちを発見し、既成概念打破のヒントとして提示する製作者、アリ・セス・コーエンの献身にも。

次々と紹介される個性的でカラフルなアイテムや着こなしに感心してばかりだと、事の本質を見誤ってしまうかも知れない。62歳のスタイリスト、ジボラ・サラモンは、理想のコーディネイトに合うイヤリングを見つけるまでに7年費やしたと言い、80歳の初代女性編集者、ジョイス・カルパティは、パールのネックレスが似合うエレガンスを維持するための努力を怠ってはいけないと言い、元ダンサーのジャッキー・タジャー・ムルドックは、81歳にしてボディコンシャスなロングドレスがマッチする体型をキープしている。

つまり、ファッションは概念以前に、日々の手間暇と努力の賜物。この聞き飽きたフレーズが、あの狂騒的なブランドブームを卒業し、押し寄せるファストファッションの気軽さを知ってしまった今の日本の若い男女の目に、耳に、どう響くか?興味が尽きない"アドバンスト(=上級)・スタイル"である。

清藤秀人

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