白い沈黙のレビュー・感想・評価
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監督の狙いが行方不明
後部座席に居た娘が突然消えた。
父は誘拐だと訴えるが、怪しい人物や物的証拠は何も無く、逆に警察から疑いを掛けられ、妻からも激しく責められる。
8年経っても娘を探し続ける父。ネットの画像に娘の生存を思わせる証拠が。
が、衝撃の事実…。
あらすじは面白そうな誘拐サスペンス。
雪国の映像は大変美しく、監督アトム・エゴヤンの代表作『スウィートヒアアフター』を彷彿。
再び寓話的な世界に我々を誘う…。
…が、良かったのは雰囲気やあらすじだけ。
かなりの肩透かし、期待外れ。
全く分からぬ娘の行方や犯人だったが、遂に手掛かりを見つけ、事件の解決に近付いていく…。
そういうごく普通に展開していくと思ったら、これが違う。
普通、犯人や娘の安否は徐々に分かっていくもの。それが誘拐サスペンスの王道。
序盤から登場する中年男と若い娘。実はこれ、犯人と誘拐された娘。
えっ? いきなりネタばらし…?
いやいや、きっと『コロンボ』『古畑』風に違いない。
そうではなかった。
ミステリーの“ミ”の字も無い。それどころか、すでに多くの方が指摘してるが、
時系列がバラバラに展開。これが非常にややこしい。
主人公の父親の現在と8年前、事件担当の刑事の現在と8年前、犯人や娘の現在と8年前…。
それらが交錯。しかも、スーパーもナシ、登場人物らの見た目もさほど変わらずの不親切さで、途中から…いやはっきり言うと、序盤からすでに訳が分からなくなってくる。
このカナダの鬼才がストレートなサスペンスを撮る筈はない。見る者を惑わすような複雑な構成で、サスペンスより寧ろ不可解な人間ドラマを狙ったのだろうが、果たしてそれが巧くいったのかどうか、甚だ疑問である。
それでも面白味があったらいいのだが、それもナシ以前に、サスペンスも盛り上がらない。
本来なら最もサスペンスが盛り上がる筈の監禁された娘と誘拐犯の関係。が、特に酷い事はされておらず、ネットやったり普通に暮らしてる感じの娘。犯人はと言うと、それを監視カメラで見るのが日課のよう。(それはそれで変態だが)
犯人はネットを通じた誘拐組織の一人のよう。現代のSNS社会の闇を描いているようではあるが、どうも脅威を感じない。
しかも娘はその手伝いをしている。8年後に唖然の真実。誘拐された娘は犯人の相方になっていた…! ここら辺、どういう経緯もしくは心境の変化でこうなってしまったかしっかり描かれていれば作品の重点になっていたかもしれないが、そんなの無かったような…? 途中から興味無くなってボケ~ッと見ていた私が見逃してしまっただけかもしれないが。
突然、父は娘と再会。苦しみ続けた末の8年後の再会にドラマチックさもナシ。唐突過ぎて呆然。しかも犯人の元を苦心の末逃げてきたのではなく、犯人の恩赦。
警察も無能。父親を疑う男性刑事も、最後今度は自分が誘拐されてしまう女性刑事も何やってんだか。その行方不明となった女性刑事が本作の衝撃のオチなのかもしれないが、何だか全く衝撃さを感じず。
一応、娘誘拐の事件の方は後味悪く解決するが、何だかこれもピンと来ず。
この見る者をモヤモヤさせる感じ、不完全燃焼な感じ、監督の狙いだったのか…?
いや、そうではないだろう。
監督の意図が行方不明になってしまった凡作。
原題は監禁
未知の世界
諦めたら、事件は解決しなかったかもしれない。
「プリズナーズ」とはまた違う感じ!!
凝った構成で最初は分かり辛い部分がありますが、雰囲気が良いので引き込まれます。「プリズナーズ」とはまた違った感じで手強さと不可解さを楽しめました。犯人は最初から分かっているのですが、一体誰なんだよコイツ感が凄いです。全部説明してしまわない所が良いです。
カナダの小さなタルコフスキー?
話が散乱
アトム
そこそこだが、宣伝に詐欺アリ。
映画としては兎も角、「サスペンスミステリー」としては落第点と言わざるを得ない一本。
ネタが魅力的なのに加え、白とグレーの画面がさらにそれを引き立てている。
加えて所々監督らしい演出の冴えもあり、最後まで物語に引き込まれるのだが。
ふたを開ければポンコツが引っ掻き回し、偶然と思い込みの力技が事件を解決するって…
オマワリ、役立たず過ぎるよ。
劇中の捜査、子供を攫われた家族の傷口に塩をすり込むだけってどうなのよ。
そのくせ刑事同士のロマンスが盛り込まれていたりして。
これって、要るのか?と。
不味くはないが、全体的にピントが的外れな印象がぬぐえない。
かゆいところに手が届きさえすれば良作であった作品。
腑に落ちない点がいくつかあるけれど…。
社会の暗部を描き、カタルシスの少ない映画
アトム・エゴヤン監督が、ホームグラウンドのカナダを舞台にして、児童誘拐・監禁をモチーフに、社会の闇をサスペンスフルに描いた作品。
映画は、現在と8年前とを時制を行き来して描いていくので、ちょっと気を抜くと何が何だか分からなくなる。
そして、行方不明になった娘・キャスが生きているのは、割と早い段階で描かれるので、サスペンス映画としてはちょっと気勢がそがれるかも。
しかし、映画が進むうちに明らかになる誘拐組織の行為は、ほんとうにおぞましい。
たぶん、この映画の狙いは、ここなんだろう。
だから、組織の全貌そのものも描かれないし、悪をやっつけたというようなカタルシスもない。
ただし、社会の暗部を描いたとしても、最後まで不気味だった『デビルズ・ノット』の方を上に採ります。
今回はアトム・エゴヤンが原案と脚本(共同)を兼ねているので、映画自体が少々混乱気味になったのでしょうかしらん。
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