「☆0.5付ける気満々で...」映画 ビリギャル 三遊亭大ピンチさんの映画レビュー(感想・評価)
☆0.5付ける気満々で...
「ビリギャル」見ました。
有村架純も全然可愛いと思わないし、話自体もテレビ局主導のアイドル映画だと思ってた。クソ長いサブタイトルも全く受け付けなかった(もしドラ的な)。なので「海にかかる霧」の空き時間に時間が合ったので半笑いで鑑賞。しかし見てみると、感動の連続。僕は5回ほど泣きそうになった。感受性が豊かな人ならそれ以上泣くと思う。
この映画の巧みな作りは数個あると思う。
それはどれも、主人公を応援したくなる、巧妙でそしてベタな罠である。タイトル通りの結末だと分かっていても、最後にはドキドキするのは本当に不思議だった。
まずは題材。受験勉強という題材は、ほぼ全ての人が経験する事。受験勉強じゃなくても、テスト勉強をしながら手ごたえを掴む事だって誰もが経験する事。家族関係もそう。親とギクシャクするなんてのも誰もが通る道(だと思う)。だから感情移入しやすいズルいつくりといえる。
あとは、応援したくなる主人公の扱い。担任や父親などに罵詈雑言を浴びせられても、次には塾講や母親が褒めちぎる。天地どちらにも振り切らない絶妙なバトル。言わば、父親VS母親と担任VS塾講の構図なのだ。そのバトルが熱いし、そこで板挟みになる主人公が可哀想で応援したくなる。こちらもズルい。母親が言っている事がメチャクチャなのは目を瞑ります。
説得力のある伊藤淳史の言葉もそう。バカタレを巧みな話術で机に向かわせるが、その口説き文句が的を得すぎていて感心する。VS担任やVS母親の時も、至極真っ当な事を言ってるのだろうが、非常に感心する。ただ伊藤淳史の演技はやはり伊藤淳史だった。
ただし、仲良しJKの3人はいいヤツすぎるね。
あれは冷めたわ。
そしてこの映画を成功とするなら、功労者は田中哲也さんしかいない。まず何と言っても、ウザいんですよねこの親父が。言う事もやる事もいちいちウザい。これから焼肉じゃけぇ〜って言ったりね。こんな親父を見返して欲しいと心から願ったものだ。白眉だったのが、玄関前で家族写真を撮る場面。田中哲也さん演じる父親に「笑え!」って言わせる。そこにこのキャラクター性が凝縮された素晴らしいセリフだった。もし最後に田中哲也が泣きながら有村架純をハグしていたら僕は劇場で大暴れしたと思うけど、結局最後も距離近はさほど変わらないんだけど、愛情関係ら修復されてる。この距離近はウザくなくていい。
安田顕さんの顛末も良かった。感動させた所で、サラリと小笑を挟むというキレの良さ。全裸なのに主張が強くないのがミソで、感動しながらクスリと笑える。
でも一つだけ苦言を。グローブの紐がが切れてるのを試合中まで気づかないのはあり得ません。笑
総じて快作です。映画が冒頭で伊藤淳史の余計なナレーションが入った時は嫌な予感がしたが、この映画は今年一番のサプライズ。自分を見下した者への復讐劇では終わらず、その先で色々人との絆を取り戻す。
この映画は、主人公世代やその下の世代の人にこそ見て欲しい。僕がもし当時観ていたら、少しは意識が変わっていたかもと思うと、惜しい。