劇場公開日 2015年2月14日

「ぼくが考えたさいきょうのLGBTQ(物理)」ハイヒールの男 ipxqiさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5ぼくが考えたさいきょうのLGBTQ(物理)

2021年9月1日
iPhoneアプリから投稿

映像はロマンチックだしすごく真面目に丁寧に主人公のドラマを描こうとしてるのは伝わる。

でも異性装とトランスセクシャルと同性愛はそれぞれ別の要素なのに、ドラマ的には同一視されてる感じがして、そもそものプランニングがちょっと雑に感じた。

私も当事者でないのであくまで想像ですが、ヘテロな男だけど女装が趣味、女なのに男の身体を持ってしまって本来の自己を回復したい、男の装いのまま男が好き、とそれぞれのケースを想定すると一緒くたにはできないはず。
一番大事な要素はトランスなんだろうから、それ一本じゃダメだったのかなぁ…

結果的にMtoFかつ男性を愛する志向、は成立するけど、若い頃のエピソードからは女になりたがってる感が弱かったので、愛する男への想いと、すべてを捨てても女になりたい動機とが今ひとつ繋がらなかった。
幼い頃からこっそり女装していた、とか女装の自分を認めてくれる男と出会って恋した、とかやりようはあったはず。
結果的にはちょっと変わり種のアクション映画、というくらいの塩梅。

劇中に出てくるような「ニューハーフ」の人に取材くらいしてるかも知れませんが、出来上がったものはあくまでヘテロな人たちが保守的な世間に向けて作った話、という印象。今ならもっと深く掘り下げられたのかなぁ。
(そうなると当事者をキャスティングするのか問題もあるわけですが。韓国映画界ならやれるのでは?)

主演の俳優さんは長身で腹筋バキバキ、アクションもキレキレ、海兵隊出身のガチマッチョの役だけど顔が優しくて、女装にあんまり意外性はない。
仕上がりのキレイさ(観客の受け入れやすさ)を優先したのかも知れないけど、似合いそうだなーって人より、えっこの人が? って落差があった方が映画的にはアガる。
海兵隊上がりの最強の男→女装、の設定自体、その落差を狙ったものだろうし。。

それと邦題にもなってるハイヒール、せっかくなら履いた状態で闘う場面が見たかった。
厳密にはハイヒールでなくとも女物の靴、スカートにウィッグ、フルメイクで並みいる強者たちを圧倒する場面が見たかったな。。
たしかに動きづらいだろうし、身体的負担は大きいと思うけど、Perfumeだってハイヒールで踊ってるくらいだし、それこそ筋肉やトレーニングの出番では。
映像的にもそっちの方がカタルシスがあったと思う。

追記。
そもそもタイトルがハイヒールの「男」だった時点で誰が誰に向けて作っていたかは明確なんだった。

ipxqi