「トイ・ストーリー史上最高のモヤっとな結末」トイ・ストーリー4 1799さんの映画レビュー(感想・評価)
トイ・ストーリー史上最高のモヤっとな結末
今までのシリーズ作は一体なんだったのか。4を通して何を一番に伝えたいのか、意図がまったく見えない作品だった。完全に蛇足。
冒頭では、ボー・ピープがしれっといなくなった理由が描かれたのち、たくましく自立して生きている女性として再登場する。その姿は、女性の社会進出を促す昨今のフェミニズムの流れを汲んでいるように思えた。
この映画を見た子どもたちは、きっと女性の自立に関して寛容的になるだろう。人の価値観は、こうしたメディアの影響を大きく受けて形成されるのだから。
ただ、そうした作り手側もとい大人による価値観の押し付けは、アニメという媒体において適切なのか少々首を傾げてしまう。
また、今回は絶対的な「悪」が存在しない。ギャビーがヴィランズの立場なのかと思ったけれど、決してそうではないようだ。
そのため、これまでのような勧善懲悪なストーリーではなくなっている。現実では、さまざまな正義や価値観などがあることから、物事を善と悪に二分するのは難しい。しかし、アニメであれば、あくまでも現実とは違うことを認識しながら、善と悪に分けてストーリーを見ることができる。
そうしたわかりやすい善と悪の対立は物語の核であり、観客も勧善懲悪を多少は期待していたはず。実際に、1〜3では善と悪の構造が成り立っていたと記憶している。なのに、それがなくなることによって、どこか釈然としない終わり方になっている気がする。
さらに、ギャビーがなぜアンティークショップにいるのか明確な説明はなく(私が見落としていなければ)、持ち主を見つけたいという想いも薄っぺらく感じた。ウッディの音声機能を欲しがるのはまだ理解できたけども…。ギャビーのバックボーンが薄いため、2のジェシーのような共感を覚えることはなく、ラストも棒読みになる「よかったね」という感想しか出てこなかった
。
確かに、愛する人と生きる道を選ぶ人生もよいだろう。しかし、果たして私たちの知るウッディはそんな人だったのか。これまでのトイ・ストーリーシリーズのファンであればなおさら疑問に感じる終わり方だった。
久々に、見終わってモヤっとする映画を見た。