「中尾彬は動かない」龍三と七人の子分たち 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
中尾彬は動かない
北野武監督最新作は、引退したヤクザのジイ様達がそれぞれのスキルを活かし、
仁義もヘッタクレも無い悪どい若者連中を成敗するというコメディ作。
……と書くとジイ様版『オーシャンズ11』とか『RED』的な映画を想像するかもだが、
全然そんなカッコいい映画じゃないです、これ(笑)。
いやまあ物語としては主人公達がそういう犯罪グループと対決する流れにはなるのだけど、
主人公達は基本的に傍若無人の頑固ジイ様ばかりなので、犯罪グループとはまた違う意味でタチが悪い(笑)。
映画はそんな迷惑ジイ様達が繰り広げるショートコントを一本の物語にまとめたような仕上がり。
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僕はビートたけしは好きだが、若手と比べれば彼のギャグはどうしてもベタだし
(勿論ベタが無性にハマる時も多々ある。火薬田ドンとか。)
『監督・ばんざい!』を観る限り、長尺のコメディ映画は不得手なのではと思っていた。
けどね、いやいや、決め付けはやっぱいかんです。
公開初日で劇場はほぼ満員だったが、
左席の若い兄さんも右席の老夫婦も前席のお爺さんも後席のおばさん2人も笑いっぱなし!
かくいう僕も、オレオレ詐欺一味のお兄さんが怖すぎるジジイ2人に挟まれて
ガクブルするシーンから気分が乗ってきて、あとは始終クスクスし通しだった。
個人的にツボだったのは、
早撃ちマックのプルプル具合(超危険)、蕎麦屋のカップルの気まずい空気、カツ丼注文全否定、
片面だけ外宣車、優しい借金取り、犯罪歴スコアラー店主、藤竜也おネエデビュー、辺りかな。
そして、劇場でいちばんの笑いをかっさらったのが中尾彬!
映画やバラエティで大御所扱いの彼だが、本作での彼の扱いのヒッドイことヒドイこと(爆)。
終盤の例のシーンで場内爆笑。
映画館では声を立てないようにしている僕も、この時ばかりは堪え切れず盛大に吹き出してしまった。
動かないのにあれだけ笑い取るなんて、ありゃ卑怯だよ(笑)。
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『ジジイが最高!』というキャッチコピーを見て
『老人→Good, 若者→Bad』みたいな説教じみた話だったらヤだなあと考えていた齢30の自分だが、
そんな部分は無いに等しく、けっこう中立でドライな視線。
家族と和解するとか仲間同士の仁義とかお涙頂戴になりそうな流れもズバッと切り、
最後も「その頃にはみんな死んでらあ!」というカラッとしたツッコミで締める。
監督らしい毒っ気の強いユーモアもほどよく抑えられ、
とにかく誰でもただただ単純に笑えるようなエンタメ作りに徹していると感じた。
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劇場公開はそろそろ終わってしまうが、
レンタルなりテレビ放映なりしてたらまた観ちゃうだろうな、これ。
仕事で疲れてる時に観ると、なんかちょっと元気が出そうな映画。
観て損ナシの3.5判定です。なんなら4.0くらいでもいいかも。
<2015.04.25鑑賞>
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余談1:
色々危ないキャラは出たけど、ある意味一番アブないのは
隣の国から即クレーム来そうなあのキャラ(笑)。
どこからも文句は来なかったすか監督。
余談2:
イギリスのコメディ集団『モンティ・パイソン』のコントを思い出した。
修道服のおばあさん3人が、不良みたいなイタズラで道行く人々に迷惑を掛けまくるという傑作コント、
その名も『Hell′s Grannies(地獄のおばあさん)』(爆)。